* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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ローフレットに手が届かないほど長いネック? もちろん超広角の視覚トリックである。
Leicaflex SL2 + Elmarit 19mmF2.8 / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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ズミクロン90ミリ。絞り開放から素晴らしい描写だ。
Leicaflex + Summicron 90mmF2 /FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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在ジャカルタの友人にSLとズミクロンを貸し出したため、このところマクロエルマー65ミリを標準代わりに使っている(ビゾフレックス用ヘリコイドリングと純正マウントアダプタを併用)。白鏡胴に白ボディはデザイン面の相性も良く、無限遠から近接までストレスのない撮影が愉しめる。ただし初代フレックスの外光式露出計には白鏡胴の反射光が悪さをするので、天空光が強い条件では単体露出計を使うべき。開放値の暗いレンズにフレックスの明るいファインダーはありがたい。
(C)Keita NAKAYAMA

『サンクチュアリ #14』

 この項のはじめの方で書きかけた「フレックス系ライカの歴史」は、SLが発売されたところで止まったままになっている。半端な構成みたいで申し訳ないが、それを書くと僕のなかでもライカ一眼レフというカメラが終わってしまいそうな気もする。といって手元の機材が消えて無くなるわけではないけれど、続きを書く前にそのボディ構造についてもう少し記しておきたい。

 初期ライカの一眼レフを特長づけているのは、シャッターのメカニズムや測光システムだけではない。実はファインダー系にもいろいろと凝った仕掛けがあって、純粋に写真を愛好するひとにはどうでも良い問題だけど、カメラ好きにはそれを読み解く楽しみがある。
 初代のライカフレックスは前に記した通り、ファインダー像の大半を空中像として(当時の一眼レフとしては)望外ともいえる明るい視野を手に入れた。これはM型ユーザーに一眼レフという新しい道具を提供するため、欠点を排除することを主眼においたためとされる。
 結果生じた撮影操作上の問題(被写界深度が確認できない、周辺でピント合わせができない、など)はさておき、その目論見はある程度成功しているといっていいだろう。ピントグラスのマット面によって生じる光のロスがいかほどのものか、それを実感する貴重なサンプルとして、いや今ならこれもひとつの個性として愉しめるような気がする。
 もうひとつ、初代フレックスを使って思うのは、このカメラが明らかに過渡期のカメラだということだ。言い換えれば「問題の先送り」より厳しく言えば「間に合わせ」である。
 フレックスが登場した時点で、一眼レフのファインダー系が測光機能を内蔵する方向に向かうことは明らかであった。じっさいに日本製のライバル機(値段は競合関係にならないほどかけ離れていたけれど)のいくつかは、おなじ時期にTTL測光を採り入れた露出システムを採用していたのだ。
 ライツ社がこれをやらずに、旧態依然とした外部測光方式でお茶を濁したのは、その当時のTTLによるボディ内測光にいろいろな問題があることに気付いていたためかもしれない。それはファインダー接眼部からの逆入光による測光誤差とか、ピントグラスを透過した光を測るために生じる測光感度分布の曖昧さといったことである。
 専門用語を並べずになるべく分かりやすく書こう。この頃のカメラがどうやって光を測っていたか。初代ライカフレックスのようにボディの表面に光を取り込むメーターの窓を設けたものを旧世代型、撮影レンズを通過した光を測るものを新世代型として比較してみる。
 前者はレンズを交換しても光を測る範囲は一定なので、広角系レンズでは画面の狭い範囲を、逆に望遠系では広い範囲の光を測ることになる。せっかくレンズ交換ができるカメラにこれは不便だ。さらに接写に欠かせない露出倍率*の計算も撮影者が行わなければいけない。ただし測光範囲はかなり自由に設定でき、その光を感じる部分とそうでない部分の境界もかなり明解に分けることができる。
 いっぽう後者の新世代型は、その得失勘定が原則として前者の裏返しになる。「原則として」というのは、今の技術なら克服できる部分も多いからだけど、そういう意味ではどちらも未成熟な技術のうえに立ったシステムである。どこまで実用に即したものにできるか、この時代のカメラメーカーにはその判断が求められ、そしてライカの(ある種の良識に基づく)判断は否定されたということだ。
 だが、問題を先送りしたライツ社は見事に独創的な回答を用意していた。SLのファインダー系に組み込まれた露出システムがそれである。

制作協力:クニトウマユミ

*注:接写時の露出倍率=主要被写体とフィルム面の距離が縮まると反射光の量は減少するため、被写体に近接する撮影で適正露出を得るにはレンズの焦点距離に撮影距離を勘案した補正を加える必要がある。初代ライカフレックスが装備する外光式露出計では原則としてその計算が必須だが、レンズを透過した光を測るTTL方式では不要となる。


2006年06月21日掲載

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