* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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モデルさん御用達のヴィンテージ古着ショップで。普段あまり見せない表情だ。
Leicaflex + Summicron 35mmF2 /FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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19ミリは光軸を僅かに傾けただけでパースが目立つ。正対すれば歪曲の問題もあって、使い方の難しいレンズである。
Leicaflex SL2 + Elmarit 19mmF2.8 / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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フレックス系ボディ10年の進化。機能は充分でないものの初代フレックスには設計と素材の贅沢さがあり、SL2はその裏返しの存在と観るのは皮相的だろうか。両機のミラーの色にご注目、SL2の視野の着色はここに起因する。マウントは当時として群を抜く大口径のもので、これは先見の明があったというべきだろう。SL2のミラーボックス上部に見える「切り欠き」は後発のレンズに対応するために加えられた(つまりフレックスとSLには装着不能なレンズも存在する)。
(C)Keita NAKAYAMA

『サンクチュアリ #15』

 1968年に登場したライカフレックスの第2世代機、SLはほぼすべての面で日本製一眼レフに肩を並べる機能を有していた。肩を並べたというより「ようやく追いついた」と書いた方が当たっていそうだけれど、それは言い方の問題である。
 すでに一眼レフシステムでドイツをリードしていた我が国産カメラ業界にあって、SLに注目するひとはそれほど多くなかったかもしれない。でもこのカメラには「遅れてやって来たTTL機」ならではの、いかにも独創的なメカニズムが詰め込まれていたのだ。その機構上の最大の眼目はカメラボディにもしっかり刻まれている。SLとはSelektive Lichtmessung、すなわち「選択測光」の頭文字である。
 その当時のTTL測光機が抱えていた問題として「ファインダー接眼部からの逆入光による測光誤差や、ピントグラスを透過した光を測るために生じる測光感度分布の曖昧さ」があるということは前号で記した。これは内蔵露出計の受光部をファインダー接眼部の傍に置いたためで、おなじ方式を採る現代のカメラでも(影響は無視できる程度に軽減されているとしても)似たような問題は抱えているらしい。
 こうした問題を完全に解決するためには、露出計受光部の置き場所を変えるしかない。ではどこに置けば良いだろう? ひとつの方策として、ライツ社はM5やCLでシャッター幕の直前で光を測るという荒技を編み出した*。これはほとんど理想に近い置き場所だが、シャッター幕の作動タイミングに合わせて露出計を隠すメカニズムを仕込む必要がある。
 可動式のミラーを持つ一眼レフにさらに可動式のメカを作り込むのは、流石に機械信仰の強いドイツ人も気が引けたのだろう。SLでは露出計受光部をミラーボックスの床下に置き、メインミラーを通過した光を裏側のサブミラーで導いて光を測る機構としている。ん? ミラーを通過した光だって?
 そう、SLのミラーはペンタプリズムにすべての光を送り込む「全反射方式」ではなく、中央部の光を一部だけ後ろに逃がす「半透過方式」なのだ。レンズを透過した光をメインミラーで上下に振り分けているわけで、それまで問題とされた逆入光の影響はほぼ皆無である。しかもミラーの全反射/半透過部分の境界をすぱっと切れば、画面の一部分の光だけを正確に測ることができる(なおサブミラーはメインミラーの上昇に同期して折りたたまれるため、バルブでミラーアップさせても格納状態しか観察できない)。

 SLの部分測光はすぐれたアイデアであり、その後のカメラ技術に与えた影響も大きい。ただし問題が無いわけではなくて、それはペンタプリズム側に送られる光が一部減らされることによるファインダー光量の低下や、機構の複雑化などに現れる。特に前者はライツ社も問題としたのだろう、ピントグラスには通常のマット面より光の損失が少ないマイクロプリズムを全面に敷き詰め、その上に配されたコンデンサーレンズと同様の球面加工をペンタプリズムの底面にも施して集光効率をぎりぎりまで高める工夫をしている(お陰でファインダー視野は初代フレックスにもさほど引けを取らない明るさとなったが、別の落とし穴もできてしまった=後述)。
 測光システムや視野の明るさとは直接関係がないが、ライカ一眼レフの特長でもある青みがかった視野はこのSLに始まっている。この着色はメインミラーの蒸着に起因するもので、理由はいろいろ推測されているがライツ社・ライカ社は一定の回答をなかなか示そうとしない。これは僕の勝手な想像なのだが、彼らはSLの開発中に「被写体の色を正確にモニターするより視野のコントラストを最適化する方がピント合わせが楽になる」というデータを得たのではないか。
 なぜそう思うのかという理由は、先の落とし穴の話とあわせて次回に書くことにしよう。

制作協力:クニトウマユミ
撮影協力:津田沼HURRICANE

*注1:この方式はライツ社が嚆矢ではなく日本のキヤノンが最初に考案したもの。

**注2:この半透過ミラー+サブミラー+床下センサーはその後のカメラにも採用例が多く、特に現代のAF一眼レフはそのほとんどが積んでいる(ただし床下のセンサーは測光用ではなくAF用であることが多い)。


2006年06月28日掲載

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