* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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雨の日に。こういう状況でマクロエルマーは発色がやや渋く、僕の常用ネガのプロ400との組み合わせは落ち着きすぎる。彩度が高めのヴィーナス400はなかなかビビッドで佳い雰囲気だった。
Leicaflex SL2+ Elmar 65mmF3.5 / FUJICOLOR SUPERIA Venus400
(C)Keita NAKAYAMA



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上掲作の中央部を左右ノートリで横構図にトリミング。粒状性は素晴らしく、まだまだ延ばせる。
Leicaflex SL2+ Elmar 65mmF3.5 / FUJICOLOR SUPERIA Venus400
(C)Keita NAKAYAMA



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M型ビゾフレックス用ベローズとマクロエルマー65ミリ(正式名称にマクロは付かない)を初代フレックスに装着した図。以前に掲載した組み合わせだが、蛇腹フードを追加したらレンズがほとんど見えなくなった。蛇腹フードはレンズの焦点距離に合わせて伸縮可能、先端には専用のゼラチンフィルターを装着できる。このベローズシステムは工作精度、青みがかった特殊塗装(ハンマートーン)の仕上がり、そして作動感覚ともに素晴らしく、「これぞライツ品質」の極めつけともいえるもの。ライカフレックスの裏蓋開閉機構もそうだが、佳き時代の贅沢なものづくりを伺わせる造りである。
(C)Keita NAKAYAMA

『サンクチュアリ #18』

 ライカフレックスSLのファインダーが抱えた問題は単純で深刻だ。なにしろレンズと撮影距離によっては「ピントが正確に合わせられない」のである。使い手による個人差もあるにせよ、このカメラで百発百中にピントを合わせられる人など、たぶん地球上のどこにもいないだろう。
 ここで「レンズと撮影距離によっては」と条件をつけたのは、SLのファインダーもこうした要素が変わるとそれなりに実用になるからである。だからいちがいに欠陥商品と決めつけるわけにもいかないのだけど、すくなくとも広角系レンズや開放値の暗いレンズでのピント合わせは至難の技だ。いや、標準中の標準であるズミクロン50ミリF2ですら、絞り開放・最近接でのピント合わせに支障を来す始末。いったいどうしてこういうカメラが、よりによってライカの名を冠して売られたのか。

 一眼レフカメラのファインダーの優劣を「ピントの山のつかみやすさ」で表現することがある。おもにマット面やマイクロプリズムをもちいた焦点板(ピントスクリーンまたはフォーカシングスクリーン)の性能を評する言葉で、合焦〜非合焦の視覚情報がピントリングの動きと連係する様子を、文字通り山のカタチに重ねたものだ。
 一般論として、峰の角度が急峻であるほど正確な合焦点はつかみやすく、撮り手は自信を持って被写体と対峙できる。逆に角度が緩やか過ぎると、どこが頂上だか分からなくなってピントを外しやすい。では峰の切っ先が針のように尖っていれば良いかといえば、それはそれで使いにくかったりする。要は最適なカーブが必要ということだ*。
 このピントの山の峰の角度は、レンズの被写界深度によっても変動する。つまり開放の絞り値が大きい(=暗い)レンズより小さい(=明るい)レンズの方がピントのピークが尖るし、撮影距離も短いほどおなじ結果となる。同様に焦点距離が長いレンズは短いレンズよりも被写界深度が薄いから、ピントのピークは尖ってくる。
 だから一眼レフの焦点板は、レンズの品揃えとよく相談して設計するべきで、真っ当なカメラメーカーならよく使われる焦点距離のレンズに合わせて「ピントの山」を最適化しておくのが普通である。
 ところがライツ社は、彼らにとって二作目となる一眼レフでこの詰めを怠った。SLの焦点板は、ピントの山がエアーズロックかギアナ高地のようなカタチをしていて、正確な合焦点の前後で視野の変動がほとんどない。結果として広角系レンズは合焦率がやたらに低く、僕の手元のレンズでもエルマリート28ミリで打率5割、19ミリなどは目測で撮った方がマシというレベル。これはどう贔屓目に見ても設計ミスである。
 そこで先の疑問に戻る。いったいどうしてこういうカメラが、よりによってライカの名を冠して売られたのか。そこには一眼レフビジネスで失地回復を急ぐライツ社の焦りがあった。

制作協力:クニトウマユミ

*注:賢明な読者はここで疑問を持つだろう。「焦点板の中央にスプリットプリズムを配せば、上記の条件によらず正確なピント合わせが可能な筈」と。たしかにその通りだが、焦点板全域で合焦が確認できるマット面はやはり一眼レフの基本にして最大のメリットだと思う。SLもスクリーンを交換式にしておけば問題は解決したのだが。


2006年07月19日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部