* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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Poliziotti in Sicilia, VIa Ventimiglia-Catania.
Nikon FE2 + Ai-S Nikkor 50mm F1.4 / FUJICHROME PROVIA
(C)Keita NAKAYAMA



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Bella in via posteriore, Spaccanapoli.
Leica M3 + Summicron 50mmF2 / FUJIFILM Neopan100ACROS
(C)Keita NAKAYAMA





Special Edition 『鳩によせて ー序章ー 』

 ときおり熱心な読者の方から、この連載で採り上げる機種が「偏っている」とのお叱りを頂戴する。ご意見はごもっともと思う。ここで扱うカメラは僕の個人的な好みで選んでいるのだけど、カメラそのものよりも背景の文化や歴史に興味が向くことが多い。ただしカメラ技術の源流を辿ると、話がどうしてもドイツを向いてしまう。これはやむを得ないことだと思う。
 僕じしんは舶来品(死語ですね)信仰はそれほどない。でもなるべく人と違うものを使ってみたいという願望が強い。だからデザインや設計の考え方が「日本人のそれと別方向を向いている」昔の海外製品が、とても魅力的に感じるのだろう。ただの天の邪鬼といわれればそれまでだけど、趣味というのはそういうものである。
 昔の海外製品の魅力は、お国柄や民族性がストレートに表れていて、それぞれが伸び伸びと個性を主張しているところだ。なかには設計者の独りよがりで破綻した機種もあるけれど、そういう自我の発露というか、崩壊ぶりを解いていくのも愉しみのひとつだと思う。
 だからジャーマンデザインだけでなく、イタリアやフランスや英国のカメラも紹介したい。でもそういう機種は流通量がすくないせいか、不当に高価だったりする。古典カメラにコストパフォーマンスを求めるのもどうかと思うが、趣味はシャレや冗談で済まされるところがたいせつだ。
 え? ここのところ散々採り上げてきたライカはどうかって? 決して高くはないと思います、中身を考えれば。

 とはいえ、いつまでも「灯台もと暗し」で日本製品に背を向けるわけにもいかない。二十世紀後半、カメラの技術開発を牽引してきたのは他ならぬ日本のメーカーなのだから。でも、これはとても個人的な印象なのだけど、日本の古典カメラ、特に高度成長期につくられた機種は、どうしてもオリジナリティが薄く見える。設計者の顔が見える機種があまりに少ない。
 ではどういうカメラを採り上げればいいか。できればあまり知られていない機種で、それでいて歴史的に重要なポジションにある物品がいい。レンズはこれまでほとんど採り上げていない単純な構成で、ちゃんと写るやつ。そんな虫の良い条件に適う機種はあるのだろうか。

 などと、柄にもなく気に病みつつ開け放した窓から、ある日一羽の鳩が舞い込んだのだった。いや、鳩の名を冠したカメラである。
 鳩は平和の象徴だという。姿かたちも優しげだ。そのいっぽうで、これは愚鈍で獰猛な鳥だと揶揄するひともいる。じっさいのところはよく知らない。でもそれが当を得たネーミングであるかもしれないと思うのは、このカメラの成り立ちがとても単純で、というより原始的で、それゆえスナップシューターとして侮れない性能を発揮するからだ。

 ……というわけで、次号より久々の国産カメラを採り上げます。例によって余談も長くなりそうですが、どうかご一読ください。


2006年09月06日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部