* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


写真
---> 拡大表示

さいきんはこういう半端なフレーミングが妙に気に入っている。
Meopta Opema IIa + Openar 45mmF2 / FUJICOLOR Pro400
(C)Keita NAKAYAMA



写真
---> 拡大表示

オペマのコマ間はこんな感じ。左右端の黒い線が「帯」にならないとフィルムを切れない。オペナーは半逆光でもへろへろで、好き者にはたまらないレンズである。
Meopta Opema IIa + Openar 45mmF2 / FUJICOLOR Pro400
(C)Keita NAKAYAMA



写真
---> 拡大表示

距離計付きオペマ。いつ眺めても美しいカメラだ。例の「無人島に持っていく本」ではないけれど、カメラ1台だけで旅に出るとしたらこういうカメラがいい。これにスローが付いていれば、なんて言っている僕は修行が足りないのだろう。レンズはF2とF2.8、どちらも45ミリ(おなじ焦点距離で他にF3.5もある)。
(C)Keita NAKAYAMA

Special Edition 『スプロケット(3)』

 イチサンゴのパトローネから引き出したフィルムチップをスプールに噛ませ、ギアとパーフォレーションの収まりを確認する。こんなカタカナばかりの作業を繰り返していると、ときおりカメラが駄々をこねる。多くの場合、それはフィルムへのダメージとなって現れる。

 僕がこれまで使ったカメラでいえば、東独イハゲー社製のエキザクタやエクサ、そして戦前ドイツはウェルタ製のウェルチーニ2がフィルム送りのトラブルを抱えていた。前者はスプロケットそのものの設計に無理があるようで(径が小さすぎる)、また後者はスプロケット軸のストップ/リリース機構が整備不良なのか、どちらも巻き上げ時にパーフォレーションを削ってしまう。酷いときには文字通り進退窮まって、暗室でフィルムを取り出す羽目になる。
 だからこういうカメラを使うときには、巻き上げをうんと慎重にやる。指の腹につたわる感触でフィルムと相談しながら、そろりそろりと巻いていく。スーパーの店頭でアボカドの熟成具合を量る、あの要領である。

 フィルム上のパーフォレーションは正確に4ミリの間隔で空けられている。通常のフィルムフォーマット(所謂ライカ判)は長辺が36ミリだから、ちょうどスプロケットの歯で9枚送って1コマになる。どう考えても単純な話なのだが、偶にこれがズレて送られる機体もある。結果どうなるかといえば、コマ間が空きすぎたり、逆の場合はコマが重なったりする。根が単純な機構だけに、このあたりの調整はかえってやっかいらしい。
 コマ間について言えば、さいきんまた使用頻度が高くなっているチェコ製のオペマも問題が多い。機械それ自体には不具合はないのだけど、コマの長辺がライカ判より4ミリ短いこのカメラ、コマ間が極小(というよりほとんどゼロ)なのだ。理由は単純で、カメラのフィルムゲートが横に広すぎるのである。コマが重なることはないから実害はすくないとはいえ、切断には細心の注意が必要だ(たいていの現像所では長巻きのまま返却してくるから、カットは自分でやらないといけない)。ゲートの左右幅をすこし縮めれば解決するのに、なんでこんな設計にしたのか、理解不能である。

 話のついでに記せば、スプロケットの配置にも注意してみると面白い。普通はスプール側とゲートの間に置くのがお作法なのだけれど、ゲートの真上にこれを置いている機種(フォクトレンダーのVITOやAKAのアカレッテなど)、置く場所は普通なのにギアが片側にしか付いていない機種(キエフ10や15など)もある。どれもちょっと無理目に見える設計だけど、不思議とこれらの機種でトラブルを生じたことがない。変化球はよほど自信がないと投げない、ということか。

 自転車のペダルを漕ぐと後輪が回る。しごくアタリマエの話だが、それを支えているのはスプロケットとチェーンの組み合わせである。この幸福なコンビが解消するような新機構はなかなか現れないけれど、フィルムは別の相方を見つけて、さっさと乗り換えてしまった。
 さいきんのフィルムカメラはスプロケットを持たず、ガイドローラーのテンションだけで正確に巻き上げていく。コマ間の不揃いなどもまず発生しない。そういうカメラにおいて、フィルム上に空けられたパーフォレーションはまったく意味のない、余剰な存在だ。
 でもスプロケットの在る無しにかかわらず、この穴のおかげで僕らはフィルムの出自を意識することができる。写真は映画とおなじ場所で生まれ、おなじ歯車で巻き上げられながら一緒に進化してきたのだ、ということを。

制作協力:クニトウマユミ


2007年03月28日掲載

<--Back     Next-->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部