* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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快晴の秋葉原、万世橋。画面右上に僅かなフレアが入っているのは左からの直射光によるもの。逆サイドからの入射ならレチナの前蓋がフード代わりになるのだが。まてよ、天地逆に構えるという手もあるな。
Retina IIIc + Schneider Xenon 50mmF2 / FUJICOLOR PRO400
(C)Keita NAKAYAMA



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順光ではこのように全画面で高コントラストとなる。強烈な解像感と高彩度の発色はこのレンズならではで、プロ400がベルビアみたいになる、といったら大袈裟か。この日は風が強かった。
Retina IIIc + Schneider Xenon 50mmF2 / FUJICOLOR PRO400
(C)Keita NAKAYAMA



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レチナIIIc・タイプ021、通称「小窓のレチナ」。1950年代半ばにドイツコダックが開発した高級コンパクト機で、コダックの世界的な販売網に載せられベストセラーとなった。成り立ちは戦前から続くフォールディングタイプの蛇腹機だが、レンズ側のLVシステムに連係する露出計など当時としてはひじょうに先進的な撮影支援機能を有する(おなじデザインで露出計の無いIIcや連動距離計を持たないIcもある)。標準レンズ一本で撮るなら機能と描写のバランスで同時代のライカを凌ぎ、また精緻な造りと美しい意匠は今も多くの愛好家を惹きつける名機である。
(C)Keita NAKAYAMA

Special Edition 『或る日のカメラ散歩(1)』

 ネットの世界で“blog”という言葉を耳にして、もうどれくらいになるだろう。さいしょはよくある一過性の流行とも思えたそれは、まるでハヤリヤマイのような勢いでひろまって、今では検索エンジンにも頻繁に引っかかる。僕の周囲にもこれで写真日記を付けているひとがけっこういる。
 メールが手紙を、ブログが日記を復活させたというのは、よく耳にする説だ。その通りかもしれないけれど、日記っていつから公開するものになったんだろうか。などとツッコミを入れるより、コンスタントにそれができるひとを尊敬すべきなのだ。それにブログに限らず、見応えのある写真と見識の伝わる写真論をネット上で公開しているひとだって少なくない。僕にも爪の垢を分けてください。
 メールより電話の方が要件を速く片づけられる。日記なんて昔から三日坊主だ。そういう僕のような人間でも、偶にはその日の行動を綴っておきたいと思うことがある。それは次の特集用に用意したカメラの資料がなかなか集まらない(けっこう大変なんです)という逃避型の理由だけではなくて、ちゃんと書き留めておきたい出来事や発見が続けて(たぶん繋がって)起きることがあるからだ。

 その日、ロケ場所に選んだ秋葉原に持参したカメラは4台。うち1台は不動品で、これについては後で記そう。残りはレチナが2台とオペマ、この連載でもう紹介したカメラばかりだ。ただしこの日のレチナはいぜんに載せた機体とは仕様が違う。ふたつの片方は脊山麻理子さんの現用機で、もうひとつはそれが故障したときのバックアップとして用意した予備機である。
 あいにくとこの両機が相前後してシャッター不調に陥ったので、例によって高知のT先生に診ていただいていた。ちなみに脊山さんはこれまでに都合4台のレチナを使っていて、さいしょの1台を除く3台はすべてシャッター不調で先生のお世話になっている。レチナは意外に壊れやすい? いや、これは旧いレンズシャッター機の宿痾みたいなものらしい。
 純機械式のレンズシャッターは(たいがいのフォーカルプレーンシャッターよりもずっと)繊細で、その作動の正確性はオイリネス、つまり潤滑油の特性によって保障される部分が大きい。だから旧いカメラでグリスやオイルが化学変化を起こすと、規定の粘性が保てなくなるためシャッター不調に陥るのだそうだ。
 T先生は「こういうカメラは壊れても直せるし、そうやって使い続けるのが粋人」と言っていつも修理を引き受けてくださるけれど、たぶんそれはカメラへの愛情と、使い手の資質を見抜いてのことだろう。そういう機械にめぐり会って、さらに名医に診ていただける脊山さんは幸運だ。パソコンなんかだとこうはいかない。

 で、その2台が修理完了と相成ったのだが、T先生はご多忙で試写ができなかった由。そこで僕がテストショットを仰せつかった。考えてみれば僕はこのタイプ(2台ともシュナイダー・クセノンF2レンズ付きIIIcだ)のレチナをじっくり使ったことがなかったので、その描写も期待しつつ、いつもの散歩写真を撮ることにする。

制作協力:クニトウマユミ


2007年04月04日掲載

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