* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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最短撮影距離、絞り開放付近、最高速1/1000秒で。微妙に後ピン。
Fujica35SE + Fujinon 45mmF1.9 / FFUJICOLOR PRO400
(C)Keita NAKAYAMA



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ダブルガウス構成のレンズとしては後ボケにわずかな癖を感じることもある。解像度優先の設計ゆえだろうか。
Fujica35SE + Fujinon 45mmF1.9 / FUJICOLOR PRO400
(C)Keita NAKAYAMA



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フジカ35SE独特の操作系はこのカットに集約される。鏡胴先端の黒い環はピントリングではなくシャッター速度設定用。露出設定は軍艦部天面のメーターを見ながら、手前の絞りリングとシャッター速度リングを操作する。ふたつのリングを同一露光値で連動させ、ライトバリュー的に使うこともできる。軍艦部背面のダイヤルはピント合わせ用、絞り値に応じた被写界深度はその上の円盤で確認できる。メッキは全体に上質だが、鏡胴中央部だけは弱かったようだ。
(C)Keita NAKAYAMA

『麗しき銀の弁当箱(3)』

 フジカ35初期シリーズのアイコンは「巻き上げ、巻き戻し、ピント合わせ」機構のトリッキーな配置にあると書いた。機械的にはこれだけ揃えばじゅうぶんに個性的だけれど、三代目のSEにはさらに強力な機能が追加されている。それは「露出計連動機構」と「最速1/1000秒のシャッターユニット」である。
 というようなことをここに記しても、今の時代に驚いてくれるひとはいないだろう。露出計の針が絞りとシャッター速度に連動する仕掛けなんて、宇宙開発でいえば犬や猿を打ち上げていたみたいなもの(暴論ご容赦)、今は無人機が火星を探査する時代である。でも無人のロケットがあまりドラマを感じさせないのといっしょで、最先端のカメラもそのカラクリは凡人の想像を超えすぎてしまった。
 いっぽうで、フジカ35やその時代のカメラたちには、分かりやすい驚きがつまっている。そういえば初めて宇宙に飛ばされた生き物は「ライカ犬」だったっけ。

 フジカ35SEをさいしょに手にしたひとが、まず間違いなく戸惑うのはピント合わせと露出設定だ。なぜってその両者の操作部が、フツーのカメラと逆の位置に付いている(絞りだけは普通の場所にある)。いや、昔のレンズシャッター機の場合シャッター速度設定はこれがノーマル配置なのだけれど、フジカ35のデザインはさらに捻りが効いていて、不思議感(というか違和感)がけっこう尾を引くのである。
 その捻りとはピント合わせで、レンズの進退は鏡胴ではなく軍艦部背面のダイヤルで操作する。今のAF一眼レフの背面コマンドダイヤルと見た目も操作感もよく似ている。とはいえこれが鏡胴のピントリングを回すよりも快適かといえば、首をタテに振るひとは少ないだろう。
 おなじようなボディ側フォーカス機構を持つカメラは他にもあって、たとえばフォクトレンダーのプロミネントがそうだった。でもあちらはへそ曲がりの設計を売りにするメーカーだったから、顧客からの苦情はそれほど多くなかったようだ。ではフジカの場合はどうだったか。
 その当時の世評はちょっと分からないけれど、おなじシリーズで何世代も踏襲された機構だから、さほど不評ではなかったのだろう。特に35SEの場合は「露出計連動」という便利機能の魅力が大きかった筈である。なにしろレチナなどの「非連動露出計」と違って、ボディ側の露出計が指した値をいちいちレンズ側に移し替える手間がいらなくなったのだ。
 撮影者は鏡胴の窓(絞りとシャッター速度が表示される)を回しつつ、ボディ側のメーター指針を観察する。赤い針がセンターを指せば適正露出。これはアナログメーターが壁面いっぱいに並ぶ秘密基地の装置みたいで、「昔の未来感覚」に満ちた操作である。
 フジカ35に限らず、カメラを持ち替えずに露出を合わせられるカメラの登場は、多くの写真愛好家をワクワクさせたことだろう。だがそれは「ファインダーを覗きながら」から「露出操作不要」までの、ごく短い未来に過ぎなかったわけだが。

制作協力:クニトウマユミ


2007年05月23日掲載

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