* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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普段は使わない露出オートで。敢えて難しい条件で使ってみたが(露出計は更正済み)結果は見事なものだった。
Konica Auto-S2 + Hexanon 45mmF1.8 / FUJICOLOR PRO400
(C)Keita NAKAYAMA



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レンズも秀逸。合焦面の解像感、トーン再現(ハイライトの白飛びはやや早めに起きるがシャドー部は良く粘る)、カラーバランスともに文句のない出来だ。ただしレンズ面への入射光でフレア(この画像では右下に出ている)を引きやすく、この点は注意が必要だろう。
Konica Auto-S2 + Hexanon 45mmF1.8 / FUJICOLOR PRO400
(C)Keita NAKAYAMA



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最後の大型機。1966年に登場したコニカ・オートS2ELは64年発売のオートS2に小改良(フィルム装填ミスの少ない巻き上げリールを採用)を加えたモデルで、原型機はCdS受光素子を世界で初採用した63年のオートSである。シャッター速度優先の自動露出、レンズの大口径化、ファインダー視野内への連動メーター表示など、当時求められていたスペックはこの時点ですべて具現化されている。外装のメッキや軍艦部のプレス/切削加工、そして革ケースのつくりなど全体の品質感はたいへんに高い。コニカは同じシリーズでレンズをさらに大口径化した「オートS1.6」を67年に発売(こちらのレンズも素晴らしい出来だ)、同社製の大型機はそれが掉尾となる。
(C)Keita NAKAYAMA

『オールド・ルーキーズ(3)』

 カメラの進化には明解な流れがある。ここで採り上げている国産中級機、というか家庭向けカメラの場合、誰もがすぐに思い当たるのは「撮影の自動化」と「小型軽量化」だろう。気軽に持って歩けて、間違いのない写真が撮れること。これはフツーの写真愛好家には必須の条件だ。
 で、もうすこしマニアックな見方をすると、「レンズ設計の高度化による撮影領域の拡大」という項目が入ってくる。さいきんはズームレンズの搭載がアタリマエだけれど、そういう飛び道具が使えなかった昔は、単一の焦点をなるべく広角側に寄せるべく、そして開放値をすこしでも明るくすべく、レンズ設計者は計算機相手に奮闘していた。

 コニカ・オートSシリーズは、現在の中古市場では人気薄のカメラのようだ。と、なぜ語尾が自信なさげかというと、このあたりの機種はカメラ店で見かけることは稀だからである。偶に見かけると気の毒なくらいの値札が付いているか、または妙に強気の値付けで、店主の相場感覚を疑りたくなる。
 これにはどちらも正当な理由がある。安いものはファインダーが曇っていたり、露出計が動かなかったりして、機能のどこかに不備がある。また高い方はそういう部分にきちんと手が入っていて、でもメンテナンスの費用だけでカメラの中古本体価格を超えてしまうので、どうしても法外っぽい値段で売るしかない。だからお店は置きたがらず、不人気に拍車がかかるという悪循環。
 もうひとつには、気軽な愛玩カメラになりにくい、というこの機種ならではの問題がある。その元凶は大柄なボディで、横幅138ミリ天地82ミリ、重さ750グラムという堂々たる体躯だから、誰でも散歩には持てあますに違いない。
 ごく普通のレンズシャッター機なのに、なぜこんなにデカくて重いのか。それはこのカメラが「大きい方が偉そうに見える」時代に設計されたからだ(これにはライカM3の悪影響もある筈)。隣のクルマが小さく見えます、などというキャッチコピーがお父さんを刺激するそれ以前、カメラはライオンのタテガミだったのだ。

 そうやって時代が巡りめぐった今では不遇を託っているけれど、でもこれは実に佳いカメラなのである。まず第一につくりが良い。前々回のコニカIIIも素晴らしかったが、あちらは中級機と呼ぶのが憚られるような定価が付けられていた。でもこちらのオートS2はごく普通の値付けで、にもかかわらず各部の工作には手抜きがない。軍艦部のプレスやサテンクロームのメッキなど、国産カメラ最良のひとつかもしれない。
 レンズも優秀で、絞り開放からもの凄く先鋭な像を結ぶ。45ミリで開放値F1.8だから、今の基準から観ればどうってこともないけれど、この頃のレンズは少しでも広角に、ちょっとでも明るくするために各社ギリギリの設計をしていた。だから絞り開放の描写は多少甘くなるのが普通なのに、このレンズはそんなところがまるでない(コントラストは多少低くなります)。しかも絞り全域で絵に独特の深みがある。
 操作性も「この当時のカメラとしては」というエクスキューズ無しに高得点を与えられる。CdSの露出計はレンジが広く信頼性が高く、そのメーターは軍艦部天面とファインダー内の両方で読み取れ、たいへんに使いやすい。露出オートの精度もマニュアル時の操作性もほぼ文句なし、である。

 と、実際に使ってこれは満点に近いと思えた機種だったけれど、やはり人間は楽をしたがる生き物だ、ということは次週のカメラを使って明らかになるのであった。


2007年07月18日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部