* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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今回は温室ロケ(実はこの3月に撮っておいた素材)。脊山さんが手にしているのはアンスコフレックス2とレチナIIIc。サイズは大差だが重量はさほど変わらない両機、手にするとアンスコの方がずっと軽快に感じるのは「デザイン・マジック」だろうか。
Leica M5 + Summicron 35mmF2 / FUJICHROME ASTIA100F
(C)Keita NAKAYAMA



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標準装備のフラッシュガンは構えてちょうど良いグリップになる(アンスコフレックス2の作例はもう少々お待ちください)。
Leica M5 + Summicron 35mmF2 / FUJICOLOR REALA ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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アンスコフレックス2の革ケースはボディと共色のたいへん上質なつくり。このケースはフラッシュガンともどもセットで販売されたのだが、現存する個体でこれが付属している例はほとんど無い。固定式のストラップは軟質ビニル製でこれもボディと共色。正面向かって左側の大型ダイヤルはフィルム給送用、その下側にあるキャンディレッドのボタンがレリーズだ。ケースを開ければ見事な工業デザインが顔を覗かせるが、そこにもちろんガンダムは入ってない。
※アンスコフレックス2機材提供:池田信彦氏
(C)Keita NAKAYAMA

『贅沢な写真機(9)』

 もうずいぶん前になるが、友人のグラフィックデザイナーとカメラ談義で夜更かしをしたことがある。僕よりずっと若い彼は国産一眼レフの信奉者で、特に70年代の製品に愛着があるそうだ。
 自分と価値観が異なるひとの意見は、いつ聴いても面白いものだが、この夜でいちばん面白かったのは「史上もっとも優れたカメラデザインは?」という下りだった。彼曰く、それは何を置いても「ニコンF2にEEコントロールユニットを付けた状態*」にほかならないという。

「え、でもあれって滅茶苦茶不格好じゃない、やっぱジウジアーロが手がけたEMとかの方が」という僕の反論は
「いぇ、あれ(F2+DS-12)はガンダム入ってますから」というマニアな言葉で一蹴された。

 家に戻って当該機の写真をwebで探し、しげしげと眺める。なるほど、と独り頷いてしまったのは、そこにお馴染みのロボットアニメが重なって見えたためである。ただしそのアニメの制作がはじまったのは70年代後半だから、ニコンのデザインはそれを5年も先取りしたことになる。
 考えてみれば「身体能力の限界を機械技術によって強化拡大する」というロボットアニメ的方法論は、カメラが辿ってきた進化の道筋ともよく似ている。つまり70年代も半ばになると、それいぜんの王道であった「根性絶対論」などはもうどうしょうもなく古くなり、我が子の身体に怪しいトレーニングマシンを実装して鍛え上げるより、油圧アクチュエータを束ねた戦闘メカを手っ取り早く身に纏(まと)うのが勝ち、となる。写真だって「露出は身体で覚えるより、機械に任せた方が勝ち」なのだ。

 と、例によって勝手な深読みとこじつけで遊んでいるのだけど、デザイナーの仕事というのは大半が「時代に動かされている」のであって、だからいろんなところに符合があるのは無理もないことだ、と思う。そのいっぽうで「時代を動かしたデザイナー」もいる。二十世紀の工業デザイン界に君臨した巨人、レイモンド・ローウィもそのひとりである。

 いやむしろ、工業デザインそのものに消費文化という「魔法の粉」を振りかけた天才、と呼ぶべきだろうか。


制作協力:脊山麻理子


*注:EEコントロールユニット=ニコンF2にオプション設定されたプログラム露出用ユニット。カメラボディとレンズの絞り機構を機械的に結合し連動させる装置なのだが、その構造は絞り環をモーターで強制的に回転させるという強引なものだった。余談だがこの装置、前に紹介した「コダック35RF」の距離計連動機構と見た目も作動原理もよく似ている。興味がある方はニコンのオフィシャルサイトを参照されたい。


2007年09月05日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部