* 連載フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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光の条件がうまく合えばなかなかの写り。
AnscoflexII / FUJICOLOR PRO400
(C)Keita NAKAYAMA



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上の画像の約25%を拡大。解像度は高くないしコントラストも低いが、そういう描写性能を求めるのは酷だろう。
AnscoflexII / FUJICOLOR PRO400
(C)Keita NAKAYAMA



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携帯に便利なアメリカンカメラたち。アンスコ社は素材の活用で軽さを、そしてコダック社はフィルムフォーマットの新設で薄さを追求してみせた。左のコダック・ディスク4000は1982年に登場した「HR-Disk」規格のフィルム(既に廃番)を用い、レンズの突出部を除けば厚みは約20mm。これならスーツのポケットに無理なく収まる。この両機とも画質は犠牲にされているわけだが、目的が明確で迷いがない、その割り切りがアメリカン。
アンスコフレックス2機材提供:池田信彦氏
(C)Keita NAKAYAMA

『贅沢な写真機(14)』

 写真機趣味にはいろんな入り口がある。高名なブランドものレンズの描写性をひたすら追求するひともいれば、珍奇な仕掛けの道具にハマって抜け出せないひともいる。自分を客観視するのは簡単ではないけれど、僕はカメラやレンズへの執着はそれほど強くない方だ(と思う)。
 もちろん、どんな道具でも「自分が撮りたいイメージの写真が気持ちよく撮れれば満足」という悟りの境地にはまだない。でも道具そのものよりも、それをつくったひとたちとか、それがつくられた背景への興味は増すいっぽうだ。だから米国製カメラをあれこれ弄っている間中、ずっと考えていたのは、アメリカという国の豊かさについてである。

 僕はずっと思っているのだけど、生まれつきのアメリカ人というものはこの世にいない。彼らはアメリカ人になろうと努力してそうなるのだ。その努力の過程で必要なものがあれば迷わず手に入れ、不要なものはとっとと捨てる。カメラのような道具も、たぶんそういうプロセスに不可欠とされた時代があって、でもやがてあまり必要でなくなったので顧みられなくなった。そういうことではないだろうか。
 もちろんアメリカ製のカメラが死に絶えたわけではない。それはあの広大な国土のどこかで、今もきっとつくられている。ただし大衆に夢を見させる道具としての写真機は、もうとっくの昔に海外製のそれに置き換えられてしまった。今回ここで紹介したコダックやアーガス、そしてアンスコのようなカメラたちは、たぶん米国製カメラの黄金期といってもいい時代の産物だ。なぜかといえば、こうしたカメラたちには「良い写真のための道具」という幻想が、いろんなカタチで折り込まれているからである。

 今回は紹介できなかったけれど、たぶんアメリカを体現する写真機というのはもっと他にある。それは報道の現場で活躍したスピードグラフィック(通称“スピグラ”)であり、また広告写真の現場で賞賛され続けたレンズ、コマーシャルエクターなどである。こうしたカメラやレンズは「お金を生むための道具」だったからだ。
 では僕ら日本人がいちばん好きなカメラ、プロが求める機能をアマチュアの手が届く値段で実現した高性能機はどうか、といえば、これはほとんど見あたらない。そういうのはドイツ人や日本人にまかせておけば良いと達観したのか、いやむしろ大概のアメリカ人は、そういう普段使わない機能にお金をかけたりしないから、自分たちでもつくろうとしなかったのではないか。こういうのは国民性の違いというより、アメリカには「お金で得られる楽しみ」が、写真機いじりの他にもっといっぱいあるということだろう。

 アンスコフレックス2の性能は、シャッタースピードが約1/25秒、絞りが約F11だそうだ。どちらも固定である。レンズも固定焦点だから、撮影に際しては弄る部分がほとんどない。これは僕らがよく知っている「写ルンです」などのレンズ付きフィルムといっしょである。
 それにしては大袈裟な、と思うか、それともそんな簡単な道具にあれだけの意匠を与えたひとたちや、受け入れた時代に感心するか。それはひとそれぞれだろうけれど、たぶんそのあたりが「アメリカ人になれるか否か」の分かれ道なのだと思う。

 最後に、今回の特集のために大切なコレクションや貴重な620スプールを提供くださった方々にお礼を申し上げます。ありがとうございました。


制作協力:山城優子


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2007年12月19日掲載

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