* 連載フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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写真:山城優子
(C)Yuko YAMASHIRO



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写真:山城優子
(C)Yuko YAMASHIRO



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写真:山城優子
(C)Yuko YAMASHIRO

『ウィルフルについて。』

 はじめて彼女が話しかけてきたのがいつだったかは忘れたけれど、その日に使っていたカメラはよく覚えている。彼女は僕が首から吊していた旧い一眼レフを、じっと見つめていたからだ。
 そうして知り合って写真や写真機のことを話すうち、そのひとが写真と写真機に寄せる想いに、どこか自分とおなじものがあるような気がした。
 それだけならよくある出会いで、続きはない。でもそこに続きができたのは、たまたま見せた僕の写真に、彼女がたいして興味を示さなかったからだ。悔しかったので、また別の機会に、今度は大量の写真を見せて感想を迫った。そのときの彼女の反応はといえば、「これは好きです」と一枚を指差しただけだった。
 そう、ヤマシロユウコは嘘がつけないひとだ。彼女を被写体にしているときも、彼女が撮った写真を観ていてもそう感じる。自分に正直で、ちょっぴり不器用で、でも伝えたいことはひといちばいに山ほどある。

 そんなフォトグラファー・ヤマシロユウコが、ちょっと昔のカメラで撮った作品を集めて、友人と写真展をやるという。タイトルは[willful]。デジタル世代の彼女は、どんな企みを持ってカメラにフィルムを詰めているのだろう。ここに作品と本人のコメントを寄せていただいた。


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  マバタキ。
                      by山城優子


一日に平均しておよそ一万五千回。一回の所要時間はおよそ0.3秒。
つまり寝る時間以外に1時間15分ほどは目を閉じているという計算になる。
瞬きによって。

瞬きは無意識だ。だからこそ大事な時ほど瞬きもせずじっくり見つめたいと思うのにどうもそういかない。

流星群を見に行った時の事、いつ流れるのかわくわくしながら待っていて、あ、今流れたって言うときに限って瞬きをする。それこそまさに瞬間の話。あの時の流れ星はもう流れはしない。それもそうだけどそうじゃなくても寝ている時間以外で1時間以上も見れていないものがあるってことが、なんか悔しい気がする。出来る事なら見れないものや知らない事はない方がいい。出来るだけ多くを見て、多くと知り合って、何もない時間はなくしたい。たとえ0.3秒でも、集めれば1時間15分。その短くも長い時間のなかで、一瞬でも自分の知らないことが私のいる場所で起きているのが嫌なのだ。悔しいのだ。置き去りは。

けどファインダーを覗くときにするマバタキは、一瞬を遮るものではない。そのマバタキが瞬きと違うのは、二度と帰ってこない時間を収めるための、マバタキだということ。マバタキは、瞬きによって失われた時間を取り戻してくれている様にも感じる。切り取るのは自分自身だから、知らない事もない、多くを教えてくれる、シャッターと言う名のマバタキ。

だから何度も何度もマバタキをする。それは瞬きと同じ様に自然に。無意識ではなく、逃してはいけない時を鮮明に。忘れたくないから撮る。憶えていたいから撮る。見た景色や表情やその時の空気も知っていたいから、撮る。誰にでも同じ時間が与えられている中でも、人より多くの時間をちゃんと知っていたいから。

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ヤマシロユウコ×ヤマダユイ写真展[willful]

2008.2.8(Fri)〜2008.2.10(Sun)
(8日14:00〜19:00、9日11:00〜19:00、10日11:00〜17:00)

ギャラリーSPACEKIDS
東京都港区南青山2-7-9
03-3423-2092



2008年01月23日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部