* 連載フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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1970年頃に製造されたヤシカ標準レンズで。絞り開放・最短撮影距離、ハレ切り無し。こういう光の条件で使えば現行レンズにひけを取らない描写だ。
Contax RX + Auto Yashinon DS-M 50mmF1.7 / FUJICOLOR REALA ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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こちらはレンズ面に太陽光が入射する条件。画面全域で暗部が浮き、特に下側のコントラストが低い。最大濃度がわずかに残るのはネガフィルムのラチチュードに救われたためで、リバーサルならそれも浮くはず。個人的に好きな描写だが、もちろん万能というわけではない。
Contax RX + Auto Yashinon DS-M 50mmF1.7 / FUJICOLOR REALA ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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ヤシカ製標準レンズ3態。左のRXに装着しているのは今回の写真で使用したDS-M F1.7で、旧ヤシカ一眼レフ用のM42マウントを持つ。中央下のDSB F1.9はその設計を発展させヤシカ/コンタックス用バヨネットマウント仕様としたもの。FX-3スーパー2000(ヤシカ銘を持つ最後の一眼レフ)に装着したML F1.9はDSBの光学系はそのまま、マルチコート処理でモダナイズを図った製品。レンズ前枠のすり鉢部分を省略した即席パンケーキレンズだが、これは反射防止膜の性能に自信を得たためか。こうした「暗めの標準レンズ」はボディとのセット販売価格を下げる意図で戦略的な価格設定とされており、市場価格も低めだが描写性能は侮れないものがある。
(C)Keita NAKAYAMA

『SLRとの対話 #4』

 SLRとは自己完結しないカメラである。ごく一部の例外を除けば、そのボディはシステムの一部と位置づけられている。これはこの方式の始祖であるエキザクタの頃からそうだった。レンジファインダー機や二眼レフの多くがシステム性を持たない(ライカのような機種はむしろ少数派だ)ことに照らせば、このカメラの特殊性が理解できるだろう。
 ではその特殊なカメラがなぜ多くの支持を得たのか。それは発展の可能性という夢をユーザーにあたえ続けたからに他ならない。必要に応じて機能を拡張し、目的に合わせて最適化できるという幻想。ひとつのボディをいろんなシチュエーションで使えます、というのは、たしかに分かりやすいセールストークではある。でも、たとえばそれがクルマだったら、万能性は物欲を刺激する殺し文句として通用するだろうか。
 思うに、SLRのシステム性というのは道具としての利便性を超えたところに魅力がある。趣味でも仕事でも、日常の撮影をこなしながら、いつ訪れるか知れない非日常のチャンスに備えよう。いざ「その時」が来たらアレを外してコレとソレを装着すれば別のモデルに変身だ。そう、システムカメラとはジェームズ・ボンド氏のアタッシェケースの中身なのである。
 だがその魅力も、システムが存続を止めた途端に色褪せてしまう。

 このところ、この特集のために旧い国産SLRを何台か新調? しているのだが、機種選定はいつになく悩んでいる。メイドインジャパンのカメラ、それも機械式であれば信頼性はじゅうぶん。ただし撮影機能にはもはや大した差はなく、というよりどのカメラにも足りない部分がある。昔のカメラだからあたりまえなのだけど、システム性や機能主義を前面に押し出したSLRは古さが目に付きやすい、ということか。
 時代を経ても色褪せていないのは、たぶんレンズの方である。この種のカメラを愛用するひとの多くは、ボディよりもレンズの魅力に惹かれていると思う。ただし旧いSLR用レンズはマウントが絶版となっているものが多く、その描写を愉しむには同じ時代のボディが必要だったりする。つまり多少の不便を覚悟しなければならないわけで、このあたりにシステムが途切れたカメラの難しさがある。
 そこで「毒を食らわば」と言っては失礼だが、面白そうなレンズを使えるマウントを持つカメラボディをひとつ買い込んだ。それが先に紹介したコニカ製SLRで、その専用マウント(コニカARマウント)を持つボディも80年代に途絶えた絶滅種だ。しかもこのカメラ、先に記したフランジバックの関係から、レンズは純正のボディ以外では使えない。マウントアダプターを使おうにも無限遠が出ないのだ。

 旧い国産レンズといえば、他にも興味を惹かれる製品がある。それは旧富岡光学が手がけたレンズ群で、いぜんに「ヤシカ・エレクトロ35」を使った折り、その描写にはかなり驚かされた。あいにくヤシカ銘のレンズはそのすべてが富岡光学の設計製造とはいえないようだが(OEMも少なからず含まれていたようだ)、まあそれは他のブランドでも事情はおなじで、真相は藪の中。つつくのは野暮というものだ。
 ヤシカ銘のレンズを使う場合も、ボディの選択肢はいくつかある。でもマウントはなるべくひとつにまとめてしまいたい。そこでこちらは、比較的新しめの機種から94年発売のコンタックスRXを選んだ。これなら旧ヤシカSLRのM42マウントとヤシカ/コンタックスマウントのレンズが両方使える。もちろん前者はマウントアダプターが必要で、撮影機能には制限が出るけれど、それを新旧ボディの違いと併せて体感するのも面白いだろう。


*モデル:大谷亜季


2008年03月19日掲載

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