* 連載フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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鏡と窓ガラスを使ったプチトリック写真。背景描写の軟らかさはこのレンズならではか。彼女の行きつけのヘアサロンにて。
Konica Acom-1 + Hexanon AR40mmF1.8 / FUJICOLOR REALA ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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ヘキサノンAR最後の標準レンズでフレンチドール風に撮る。ハイキーに撮ってもトーンが飛びすぎないのはネガカラーの美質。
Konica Acom-1 + Hexanon AR50mmF1.7 / FUJICOLOR REALA ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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被写体背後の白熱灯、天井の蛍光灯、カメラ背後からの自然光によるミックス光源。絞り開放とカメラボディの最低速(1/8秒)+リアラエースで微妙な息づかいの表現を狙った。
Konica Acom-1 + Hexanon AR50mmF1.7 / FUJICOLOR REALA ACE
(C)Keita NAKAYAMA

『SLRとの対話 #15』

 旧いカメラを使っている方なら先刻ご承知だろうけれど、失敗はいろんなところで起きる。それはカメラの使い方が間違っているか、カメラが故障しているかのどちらか(または両方)である。
 使い手のミス、というのはあまり認めたくない話ではあるけれど、実際にこれを防ぐのは難しい。カメラの進化とは、一面そういうヒューマンエラー防止策の発展の歴史でもあるので、時代を遡るほど人為的ミスの可能性は高くなるのだ。まあ言い訳ですね。
 で、誤操作のなかでもいちばん恥ずかしいのは何かと言えば、これはフィルム装填の失敗だろうか。ちゃんと撮れているつもりが、フィルムがいつまでたっても終端に行き着かない。カウンターの数値が所定の数字から3コマあたりを過ぎたところで異変に気付く。そこで巻き戻しノブを操作して悲嘆に暮れた経験は誰にでもあるはずだ。
 いや、何度もやっているのは僕だけか。
 フィルム装填ほどではないにせよ、露出の失敗というのも恥ずかしいリストの上位に来る。かの文豪ヘミングウェイは「男が下手だと認めたくないこと」の代表例としてクルマの運転とSEXを挙げたそうだけど、まあそれはともかくとして、写真趣味に深く首を突っ込んだ人間には「思うような露出で撮れない」というのも、なかなか認めたくない恥に違いない。

 70年代SLRを使っていて露出の失敗が起きたとしたら、その原因はおおむね光の読み方にある。失敗が起きやすいのは逆光の条件で、これはカメラの取説(さいきんは海外のwebサイトからダウンロードできることが多い)にもきちんと書いてあって、そういう場合はマニュアル操作で補正を加えて撮るか、AEでもフィルム感度などで補正しろ、と丁寧に指導してくれている。
 とはいえ、ひとくちに逆光といっても被写体と背景の明暗差はケースバイケースなので、補正値の定量化はもともと無理な話である。特に70年代SLRの大半が採用していた測光感度分布、つまり中央部重点測光(画面中央から周辺に行くに従って感度が落ちる方式)の場合、画面のどの部分を計っているかが判然としないので、正確な判断はひじょうに困難となる。
 これは現代のカメラでも事情はいっしょで、そういう場合に備えて部分測光や多分割測光が積まれたわけだ。特に前者のスポット測光は確かに有効で、人物写真などではわりあいに正確な指示値を出してくる。ただし万能というわけでもなくて、測光範囲が周辺部の影響を受ける機種もけっこうある。これは焦点板による光の拡散が原因らしい(意外に思われるかもしれないが、比較的新しめの機種であるコンタックスRXもこの問題を抱えている)。

 露出の問題は理想を追い求めればきりがない。写真において光の条件は一定ではなく、また適正露出の概念も撮影者によってさまざまだ。もともと正解が出にくい問題なので、難しい方程式を使って問題を解くよりも、簡単な暗算で済ませた方が健全、という考え方もある。
 だから70年代SLRのようなカメラを使う場合、逆光で露出に迷ったら地面や壁にレンズを向けて針の動きを読む。18%グレーに近い部分を探すのは、慣れればけっして難しくない。すくなくとも露出モードや測光範囲の選択に迷うより、ずっと早く答えを出せる。その答えが間違っていたとしても、自分で原因がつかめればそれが進歩につながるだろう。
 そう、昔の写真家たちは電卓に頼らず暗算で正解を出せたのだ。


制作協力:クニトウマユミ
撮影協力:boy GooD girl



2008年09月17日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部