* 連載フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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「BOYISH」でもちっとばっかし、なまっちろいな。
Fujica 35M + Fujinon 45mmF2.8 / FUJICOLOR REALA ACE
(C)Keita NAKAYAMA




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「girlie」目が覚めているあいだも夢を観られるのは、たぶん彼女の才能だ。
Contac RX + Yashica ML50mmF1.4 / FUJICOLOR REALA ACE
(C)Keita NAKAYAMA




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この連載に女性読者が付いているのか、ハナハダ疑問だが勝手に「女性にお勧めしたいカメラ」を考えてみた。左はお馴染みのオリンパスペン。59年の初代からほぼ四半世紀を生き抜いた偉大なるハーフサイズ機だ(写真は最終型のEE-3)。右は西独フォクトレンダー社のVITO-B。いぜん目測カメラの項でも紹介した名機で、あの時のプロントシャッター付きがあまりに良く写るのでプロンターSVS付きも買い足した(たんにスローシャッターの有無しか違いはない)。操作らしい操作はほとんど不要のペンは文句なしのガーリーカメラだが、シンプルと見せて仕掛けだらけのVITOはボーイッシュというより「女性に見せて受けを狙う」ボーイズカメラかも。
(C)Keita NAKAYAMA


『ボーイッシュ、ガーリー』

 地下鉄の駅で、眩しい女性に出会った。いや、輝いていたのは彼女の耳元だった。

 夕方のすこし混雑したホームに降りたとき、その女性はちょっと離れた場所で電車を待っていた。いちおう断っておくと、そういう場所で人物ウォッチをする習慣はまったくない。彼女が僕の目を射抜いたのは、耳の両脇の円盤が、まるでステージの電飾みたいな光を放っていたからだ。
 思わず近寄って観察すると、発光源はヘッドフォンの全面にちりばめられた大粒のラインストーン。これがテーマパークの夜のパレードみたいにキラキラで、なんとも素晴らしいヴィジュアル効果である。どこのメーカーが売り出したのだろう?
 家に戻ってネットで検索してみたところ、そういう商品は小型のイヤフォンにはあるものの、大型のヘッドフォンには存在しないようだ。でも地下鉄でみかけた彼女の「電飾」は、ドライバー部の直径が7,8センチはあろうかという密閉型だった。ということは特注か、またはお手製なのだろう。
 これが男の持ち物だったら、ラインストーン(さすがにないと思うが)はおろか、黒光りするエナメルの財布やベルトでも趣味を疑うところだ。それが若い女性の、いや年齢を問わず女性の持ち物となると、許せるどころか積極的に肯定したくなるのは、いったい何故だろう。
 そこで考えたのは、女性に似合うカメラのことである。

 さいきんの若い女性にどんなカメラが人気なのか、そちら方面のトレンドに疎いのでよく知らない。ちょっと前には銀色の一眼レフを持った子によく出会ったけれど、とんと見かけなくなった。あれも一種の流行りだったのか。
 カメラメーカー各社のカタログページを眺めてみると、女性ユーザーを意識したカメラはかなり多い。多くはパステルトーンのメタリックカラーで、金属外装だとしたらたぶん着色アルマイト仕上げだろう。黄色や赤などのソリッドカラーは樹脂モールドか、それとも塗装か。いずれにせよ量産品としては手の込んだ仕上げだ。
 とはいえ、そういう女性向けのカメラは、どれも上品ではあるけれど、装飾面での「お目立ち度」はそれほど高くない。というか、ラインストーン仕様のヘッドフォンなどに比べれば、ネイルアートとマニキュアくらいの差がある。
「これなら、無理をすれば男でも持てそうだなあ」と、カタログを前に思わず声に出してしまったけれど、無理をする必要はまったくない。でも、もっと女性向けに特化したデザインのカメラはないのだろうか?

 昔のカメラにはそういうものがあった。まず思いつくのが「フジカミニ」。これはハーフサイズが盛んにもてはやされていた頃(発売は1964年)に、メーカーみずから「女性向け」と言い切って出したカメラだ。その種の製品が珍しくない今と違って、当時はカメラといえば男の道具。それを女性に使って貰おう、男性ユーザーは切り捨てようという発想は、昭和三十年代の日本ではかなりとんがっていた筈だ。
 気軽に持ち歩けて、簡単に写真が撮れる。そのためボディのコンパクト化と操作の簡便化には意が尽くされた。意匠面も凝りに凝っていて、黒銀ツートーンの外装は通常のカメラを反転したものとし、フィルム感度の指標にはなんと人造宝石が埋め込まれていた。ヒカリモノ度はそれほど高くないが、ラインストーン仕様の先駆けみたいなカメラである。
 あいにく僕の手元にこの機種の備えはなく(気軽に買える値段で流通しているけど、たぶん買っても使わないと思う)、興味を持たれた方は機種名で検索されたい。なに、このデザインなら男でも使えるじゃないかって?
 そういう向きには、東独ペンタコン社の名品「ペンティ」をお勧めしたい。これもあいにく手元にない(買わない理由はいっしょ)けれど、ネットで探せばすぐに見つかる。そしていちど観たらぜったいに忘れないデザインだ。写真で見るとビーズの財布みたいだが、実物に触れてもやっぱりビーズのガマグチ風である。でもパーティドレスに身を包んだ貴婦人が手にしたら、これはそれなりにサマになったのでは、と思う。

 ところで、女性が好むカメラというのは大まかに分けて二つの種類がある。ひとつは見た目が可愛くて持ち歩きに邪魔にならないもの。これは文字にするのは簡単だけど、カタチにするのはけっこう難しい。もうひとつは「自分の意志で撮っています」という、クリエイティブ感が漂うもの。見かけは多少ゴツくても、また持ち歩きに邪魔であっても、ある一定の線を越えなければ問題とされない。
 この二つの方向性、僕は勝手に「ガーリーカメラ」「ボーイッシュカメラ」と呼んでいる。前者の代表機種はロモLC-A、後者のそれはニコンのFE系(ただし色はシルバー限定)あたりか。どっちにしても、デザインの装飾性にはいまいち欠けるきらいがある。誰か外装をラインストーンで埋め尽くした、ヴィジュアル強化仕様をつくってみる気はないだろうか。

 いや、女性の道具にあまり高い装飾性を持たせるというのも、問題がないわけではない。冒頭の地下鉄の女性にしても、僕にはヘッドフォンの印象が強烈すぎて、顔も髪形も服装もまったく思い出せないのだ。


モデル:yuko&aki


2008年11月05日掲載

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