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* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 16 人吊り その5  Idol

 あるアイドルをアクション映画で吊ることになった、ロケーションで場所は公園。
 カットは進みいよいよ「つぎは吊りです」ということになった、吊りベルトを装着するにはいったん衣装を脱がなくてはならない、見晴らし良く見物もいる公園内でそれは出来ないので、打ち合わせではいったんロケバスに戻って着替えるということになっていた。

 そこで私は吊りベルトを持ち、彼女に声をかけ外の道に止めてあるロケバスに向かって歩き始めた。
 一緒に歩き始めた彼女は公園を出たあたりで私が吊りベルトを持っていることに気づき「ひょっとしてロケバスに行くのって私のためですか?」と聞いてきた、「そうだけど」と答えた私に彼女は「ロケバスまで行ったんじゃ時間がもったいないです、私のことなら別にいいですからここで付けてください」というと、往来で(もう公園の外なのだ)スカートをまくりあげた。

 「わわわ(汗)わかった! でもせめて公園の中で着替えようね!」と私はあせりまくりながらスカートを降ろさせ、公園へ戻った。

 そして戻りながら内心舌を巻いた、なにしろ彼女はおっとりした天然ボケがウリのアイドルなのだ。ボケのふりして実は・・というタイプもいるが彼女は待ち時間もマネージャーとふざけあっていたりして本当に天然なのではないかと思っていたからだ。

 ところがこの状況判断、実のところ撮影は押していて予定を消化できるか怪しいところにさしかかっていたのだ、ここで遠いロケバスまで着替えに行ったのでは時間のロスは大きい(とはいえ彼女がアイドルでなかったとしても衆人監視のなかで着替えさせる手はない)私は彼女がこの状況を正確につかんでいたことに驚いた、そして自分の羞恥心より撮影を優先させる役者根性にも。

 顔の可愛いさだけで芸能界を渡っているアイドル、という割とマイナスイメージを持っていた私は自身の偏見を大いに恥じ入り、熱烈なファンになった(可愛い女の子は基本的に好きなので、もちろん)
 ・・というのは数年前の話なのだが、最近いまひとつ売れていないようなので心配である。


2002年01月30日掲載

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