* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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撮ったままです、中央に女の子がいます。


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ひと気のない街に引っ越しました。

※この画像はAdobe® Photoshop®を使って制作されました。





Roll 28 デジタル様

 「オメガマン」(ワーナー・ブラザース 1971年)という映画がある、リチャード・マシスン原作のSF映画だ。

 お話では世界大戦があって人類は絶滅、わずかに残った人間も細菌兵器によって日射しに弱くなり、にんにくが苦手となり、血を吸って仲間を増やす生物に変化してしまっているという設定だ。

 つまりはひねった吸血鬼物で、チャールトン・ヘストン演ずる主人公は吸血鬼になることを拒み孤独な戦いを続ける人類の最後の男、ということで「Ω」マンなのだ、が、それは今回のテーマではない。
 劇中、人類が滅んだ象徴として人っ子一人いない大都市という絵があるのだ。

 ニューヨークかどこかの大通りを俯瞰でとらえているのだが、白昼にもかかわらず街路にいっさいひと気がない(もちろん車も走っていない)およそありえないビジュアルであり非常にインパクトがあった。

 これはどうやって撮られたのだろうか? 長時間露出(1コマ30秒とか1分とか)で人を消す、というテクニックはある、しかし混んでいる街路では人や車が常に数多く存在するので一つ一つは移動していても、それらは結局半透明の影となって残るだろう。

 これはもちろん合成だ、その方法を説明すると、まず大通りをムービーである程度の長さ撮影する、ある一コマに着目すればそこここに人や車が存在する、しかしそれらは動いているのでいつも同じところにいるわけではない、別なコマを見れば人物は移動していてその場所の背景(建物とか道路とか)が見えている、そこでその背景を切り取り先の人物の上に移植するのだ、画面に何百人いたかは知れないがこれを全ての人物、車に対して行えばひと気のない街ができあがるというわけなのだ。

 言葉にすれば簡単だがこれが容易でないのは理解していただけると思う、Aコマの人物の背景がBコマで全て見えているならまだしもそうは問屋がおろさないだろう、おそらく多くのコマから少しずつ絵を切り取ってくる必要があったと思われる。

 デジタル編集機のない時代にこれは驚異の技でそれなりに評判になった(すくなくとも一部のマニアの間ではそうだ)当時まだプロでなく、というよりガキでしかなかった私が「すげ〜」とか思い、どうやって作ったんだと思い(まあ私がどう思ったかはともかくとして)映画雑誌にその解説が載ったくらいだからそうとうに話題性があったと言えるだろう。

 しかし今は簡単である、デジタル編集機に絵を取り込めばあっちのコマのこの部分を切ってこっちのコマにもってくるなど朝飯前にできる、紙を切って貼りこむより楽なくらいだ(そもそも今や2つの絵を比較して違っている部分を抽出する技術があるのでこういった作業は半自動化さえ出来るかもしれない)

 デジタル様の話が出たついでに私もマネをしてみることにした、30年前の驚異に現代の武器で挑戦だ。

 先ほどJRの駅前に行き改札口付近をデジカメで10枚ほど撮影してきた、これをAdobe Photoshop*(フォトレタッチソフトだ)で開く。

 一番人物の少ないカットを原板としてどこに人がいるかをチェックする「ふむむ電話BOX前におじさんが立っているな、他のコマで電話BOXが見えているのはないかな?」という具合だ。
 見えているカットがあればそれを「切り抜きツール」で切り取り、原板上にコピーする、位置は「ルーペ機能」で拡大しながら調整すれば間違いがない、これを何回か繰り返すと簡単に人無しの駅前が出来た。

 人無しだけだとさびしいので女の子を一人切り抜いて配置する(これの元が一枚目の写真で無修正の絵だ)置いてみたらなんとなく映えないので範囲選択してすこしだけ顔色を良くする。

 改めて見ると建物上のアンテナと給水塔がいかにも無骨なので消すことにした、青空の色を「スポイトツール」で取り込み、「筆ツール」でペタペタと塗る。

 青空はグラデーションになっているので消すべき部分を右と左からせめてくると中央で色の段差が出来てしまう、しかたないのでそのへんは「エアブラシツール」で適当に色を混ぜてごまかす。
 まだちょっとごまかし足りないなと思ったのだが夕食の支度をしなければならない時間になったのでやめることにした(だから空にはちょっとムラがある)こういう作業はやめどきが肝心である。

 始めてから2時間足らず、完成品が2枚目だ、まあ今や写真といえどなんにも信用できないってことですね。


※編集部注)Adobe、Adobe、Adobe® Photoshop®は、Adobe SystemsIncorporated(アドビシステムズ社)の商標です。


2002年04月24日掲載

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