* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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照明技師








Roll 32 技師

 チーフとして過不足ない働きをしているといつかチャンスがめぐってくる。

 一番多いのが親方である技師に作品がかち合った時だ、仕事を依頼してきた相手があっさり「じゃあ他をあたります」と引いてしまえばそれきりだが「他に誰か紹介していただけませんか?」となる場合もある、一本立ちしても問題あるまいと親方が判断していれば晴れて技師デビューだ。

(あと、その技師が太っ腹ならばという条件もある、というのも使えるチーフを手放すと苦労するのは自分だからだ)

 映画人としてのキャリアにとって「私は××××で技師とクレジットされています」と言えるかどうかは重要であり、その後の人生に大いに影響を与える、どういう経緯で技師に昇格したかなどは誰も気にしないのでなったもん勝ちである。

 しかしいつまでたっても万年チーフという奴もあり20代の若さで一本立ちということもある、基本的には腕が良く忙しい技師の下で働いていたほうがチャンスが多いはずなのだがこればかりは時の運だ。

 原則的には早ければ早いほどいいのだが、時に「早すぎる」ということがある(相撲ではこれを「家賃が高かった」という)腕が追いついていないのに諸般の事情で3階級特進ぐらいしてしまうことがあるのだ。

 うまくいけばもちろん大躍進なのだが、失敗すればキャリアの上で激しいペナルティになってしまう「あいつはまだまだだな」と評価されてしまえば当分浮かび上がれない、「まだまだ」なら「いずれ」ということはあるが、実際には「失敗した」というイメージが関係者間に刷り込まれるのでヘタをすると一生浮かび上がれない可能性だってあるのだ。

 妙な話だがそんな大抜擢をうけるのは何か体制に問題があってバタバタした結果である場合が多く自分のせいだけでなく失敗する可能性が高い、しかしどういう経緯で技師になろうがなったもん勝ちであるのと同様、どういう経緯で失敗しようが細かい事情はだれも忖度してくれない。

 とはいえまあチャンスを前にして引くやつはいないだろう、皆それなりの自負をもって仕事をしている、俺にまかせりゃこんなことを、と思う物の一つや二つ持っていないなら映画屋やっている意味はない。
 それに「どんな状況であろうと腕のあるやつは結果を出す」という考え方は常にあってそれはあながち間違っているとは言えない、だから、チャンスは前髪をつかみにいかなくてはならないのだ、つかんだ髪がフェイクであろうとなかろうと。


2002年05月22日掲載

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