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寧夏回族自治区、中衛にて


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 38 ロケーション 西遊記

 「西遊記」を撮るのに操演がいらないはずはないのだが、本番直前まで誰もそのことに気が付かなかった。
 Roll 35にも書いたことだがたぶんプロデューサーも監督も仕掛け物のある映画を撮ったことがないのだろう。

 特撮映画でよく一緒に仕事をする監督が<スペシャル・エフェクト・スーパーバイザー>として呼ばれ、そこで初めて操演部がいないことに気付いて騒ぎになった、「操演予算みてませんでした」という例のあれである。

 操演呼ばなきゃ出来ないよ、とその人が言って仕事をまわしてくれたのはいいのだが、案の定「もうすでに予算をオーバーしておりまして・・・」というプロデューサーお定まりの泣き落としが入った。

 私の他に助手一人と機材一式という当たり前にしてささやかな見積もりをも値切りにかかって「上海電影全面協力ですので機材はすべて向こうで調達できます、私も含めてスタッフ全員協力しますので、ここはひとつ身一つで来ていただいて・・・」などと言う。

 絶対にダメ!

 予算交渉をしているときのプロデューサーは詐欺師そのもので、金を浮かすためならなんでも言う。
 現地にあるとか、私も手伝うという話が本当であったためしはない(他のパートも暇なら手伝ってくれるだろうが、自分の仕事を放り出して操演部を手伝うわけない、プロデューサーなんて現場にいないことの方が多いだろう)だいたい操演呼ぶことも知らなかったあんたは我々がどんな機材を必要とするかわかって言ってるのか?

 中国大陸で立ち往生する自分が容易に想像できるのでことわろうと思っていたところSFXアドバイザーから泣きつかれた、もちろんそうなれば困るのは自分だからだ。

 ならば、と考え直した、操演仕事をするときには絶対に現場にSFXアドバイザーは居る、だからこいつ、じゃなくてこの御仁を手伝わせれば助手は一人は確保できる。

 あんたが手伝うのが条件だからね、と念を押して助手の件はあきらめ機材費だけをなんとか確保した。

 しかしいったい何をするはめになるのか見当もつかない、作り物の蝶々が飛び、緊箍呪(きんこじゅ、孫悟空の頭の輪っか)が飛び、人が飛び、紐が飛び、人にからみそして切れる、黄河から泡が湧きあがり、突風が起こり、刀から火花が散り、陽炎が立ち、朝もやが立ちこめ、怪しい煙が漂う、のはわかっているのだが(操演なしでどうやって撮るつもりだったのだ?)その他にもアクション補助でなにかやってもらうかもしれぬと言う。

 しかたないので「何があっても大丈夫」というだけの機材を用意した、分散していたのでは一人で面倒を見れぬので、全てを一つの箱に詰めた、縦横1メートル、高さ1.5メートルほどの頑丈な箱を作って全部納めたのだ。

 各種ピアノ線、大小滑車、ザイル、ワイヤー、カラビナ、シャックル、吊りベルト、レギュレーター、ゴムホース、ホース継ぎ手、銅/真鍮パイプ、釣り竿、水道/電気/ガス/木工工具、ネジ釘、針金、各種テープ、接着剤、ともかく思いつくもの全てを詰め込んだその箱は重量二百数十キロに達し、キャスターで押して歩くときはなんということもないが、段差の一つもあった日にはにっちもさっちもいかない代物となった。

 大人4人揃わねば持ち上げることも出来ない魔法の箱をかかえて、私は1ケ月の中国ロケに出発した、1992年の秋のことである。



というわけで次回より中国ロケ編です


2002年07月10日掲載

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