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筋斗雲と私


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 47 中国ロケ 旅はいつか終わる

 上海から西安への移動は飛行機だったのだがとんでもなくローカルな国内便で、どれほどとんでもないかというと、客がまだ着席していないのにタキシングを始めるとか、シートベルト着用のサインが出るのは当然としてシートベルトが無い席があるとか、客室乗務員が救命具の使い方を説明するもののその救命具が無い席があるとか、それどころか座席の背もたれが壊れている席があって、体重をかけると後ろに倒れるのでその席に座っている奴はずっとベンチに腰掛けるようにしていたとか、そんな感じである。
 西安から銀泉への移動も飛行機の筈だったのが行ってみたらバス移動(所要12時間以上!)になっていて、当然皆は文句を言ったのだがコーディネーターが「済みませんが皆さんの乗る予定の飛行機は先週墜ちました」というので誰も何も言えなくなったとか、そのバスは深夜峠道で道に迷い、かたや千尋の谷、道幅はバスの全長ギリギリでガードレールもないという場所で方向転換し始めたためパニックを起こして窓から飛び降りようとしたスタッフが居たとか(私ではありません、寝ていてよかった)
 早朝、トイレ休憩として街道沿いの集落で停車したのはいいけれど、共同便所と称するものは腰高にレンガが積まれただけの、屋根もない吹きさらしの場所で、人目をさえぎるものとてない囲いのなかで、空いた地面に向かって大小を適当にするというものだったとか、全行程14時間、手違いで私はメシ抜きだったとか、大陸のロケーションはなにもかもとんでもないものだった。
 こんな撮影耐えられんと思ったことの一度や二度ではなかったが、よくある話で今は良い思い出である、少なくとも「俺はこんなひでえ目にあったぜ」という不幸自慢にはことかかない、何ごともなく記憶に残るものが何もない人生より、ひっかかりが多いほうが実り多い人生なのだと思うことにしよう。

−中国ロケ編 おわり−


2002年09月18日掲載

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