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* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 48 撮影快調

 スケジュールがギリギリでちゃんと期間内で終わるかどうか危うい時、対策会議が開かれることがある。
 しかし具体的な対策はなにもとられず「みんなで頑張るんだ」とか「だめもとでやってみよう」で終わりそうになることが多い、前近代的で労働集約的な部分のある映画屋稼業ではそういった体育会系の議論がまかりとおるのだ。

 でも私は異議をとなえる。

 操演部が火薬や人吊りを「ダメもと」でやろうものなら人の生き死ににかかわる。鉄で出来ている物は寸法が1ミリ違っていれば1センチ違っているのと同じだ、トルクの足りないモーターは気合いでは回らない。
 だから比較的「ダメなもんはダメ」と言う性格ができあがる、これはパートの性格と言ってよい。

(対局にいるのが演出部だ、あるシーンの演出にどれだけ時間がかかるか前もって知る方法はない、頑張れば早くなるかもしれない、すくなくともそう思う余地は常にある、だから演出部は気合いと根性に満ちあふれている)

 そこで「よ〜しやるぞ エイエイお〜」てな具合に盛り上がっている演出部に「今まで1日4カットしか回っていないのに、明日から急に10カット回ると本気で思うわけ?」とか、プロデューサーに「スケジュールが伸びるなんて考えたくないのはわかるけど、考えなければ避けられるってもんじゃないでしょ」などとイジワルいことをつい言ってしまう。

 当然熱く燃えている人々の反発を買う。

 気力がなくなればペースもクォリティも落ちるし、失敗も多くなるのが道理なので、かならずしも彼らが間違っているとは言えない、だから水を差すばかりではいけないのもわかるのだが「無理をすればキズが深くなる」というのもまた真実である(という話は前々回に書いた)

 そして何より問題なのが「頑張る」とは多くの場合「睡眠時間を減らす」という意味であるということだ。

 私はよくチーフ助監督に「完徹した後では大爆発はやらないからね」と言っている。「危険」ということを他のパートはあまり意識しないだろうが、疲労や睡眠不足で判断力が低下すれば操演部のやっていることは本当に危険なのだ。これを「気合いと根性」で乗り切ろうとするのは(大げさに言えば)職業倫理に反すると言える。


2002年09月25日掲載

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