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8ミリカメラ(シングル8)


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 49 What's MOVIE ?

「北海道の高校生です、映画好きな仲間が集まって自分たちで映画を作ろうということになりました、映画の作り方を教えてください!」というmailが先日届きました。

 実のところこういうmailは何度も受け取っています、口のきき方からしてなっていない困ったちゃんも多いのですが、この君は比較的まともで、更に明るく元気なあたりはいいのですがしかし。

「映画の作り方」って何だ? そもそもそれは「本当に映画なのか?」

 というわけで、ともかく「映画ってのはムービーカメラで撮影されたフィルムをスクリーンに上映するものを言うと思うのだけど、8ミリフィルムで撮るの?」と聞き返したところがいきなり絶句して「出直してきます」というmailがきたかと思うとそれきりになってしまいました。
 別段いじめるつもりはなかったのですが今アマチュアにとって「映画を撮る」のはきわめて難しいのです。

 8ミリはカメラや映写機を手に入れるだけでも大変です、地方在住だとフィルムも取り寄せになるでしょう、現像もかつては朝イチで現像所に出せば午後イチにあがったものですがいまは1週間から10日前後かかるようです、10日後でなければあるカットがOKかNGか判別がつかないのは映画製作上きわめて重大な障害となります。

 ならば別段8ミリにこだわらなくともビデオでいいじゃん、と思われる方も多いと思うのですがビデオとフィルムは回る寿司と回らない寿司くらい違います。

 フィルムと違ってビデオの映像は明るく色鮮やかですが、深みがありません、細かい話は避けますが明暗を表現する幅(ビデオで言えばダイナミックレンジ、フィルムならラチチュード)がビデオは狭すぎるのです。
 雨に濡れる花をフィルムで撮れば(そのカメラマンの腕が良ければ)それだけで人になにごとかを訴えかける詩的な絵になり得ますがビデオだとせいぜい天気予報の背景にしかなりません。

 これは画質の話ですが問題はそれだけではないでしょう、ビデオは明るい部屋に置いてあるTVで見るのが普通ですがそのTVは日常生活の地続きにあります、普段から天気予報を見ているその画面に雨に濡れる花を映したとしても見る者になにか特別なエモーションを呼び起こさせるのは難しいということです。

 人が出てきて演技をしても、それが運動会や旅行の記録とは違う特別ななにものかであると認識させるのは難しいわけです。
 つまりビデオでドラマを作るのはとても難しいのです。

 一方映画は映写機とスクリーンをセットし部屋を暗くするという儀式が必要でありいつもと違う何かがここで起こるという気分を高めてくれます。
 暗い部屋の中で映写機の発する光の帯が踊る様は魔法のようで、闇の中に身を置いてスクリーンを見つめるという行為はそれだけで催眠効果があります、感情移入しやすくなっている人は取り込みやすいといえるでしょう。

 プロと比べるとあらゆる面で不自由なアマチュアが人に感銘を与えたいならせめてはメディアの力を借りるべきだというのが私の意見なわけです。

 ここではっきり言ってしまいますが『映画は、たいしたことがない作品でも良く見えやすい』(!)のです。


2002年10月09日掲載

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