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フレアとゴースト


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 57 ハレーション

 強い光源(たとえば太陽)が画面内にあると、その強い光がフィルム内部で反射し本来光が当たっていない部分までも明るくしてしまうことがある、これを「ハレーション」と言う。

 ハレーションが起こると画面の一部(又は全部)に白いモヤのような光が見える、意図しない光が画面に現れることを「カブる」(被る?)と言うが、この場合は「白カブリ」していると言う。

 ひどいハレーションは前後のコマにまで影響する、画面の上部でハレーションが起こっているのに画面下部にもカブリが出ているならそれは次のコマのハレーションが見えているのだ。

 さて光源が画面内にあるか無いかに関係なくレンズに強い光が当たっているとレンズの鏡胴内で光が乱反射して白カブリを生ずることがある、これは「フレア」と呼ばれる。

 ハレーションにしてもフレアにしても撮影効果を損なう、レンズフードはフレアを防止するための仕掛けだがレンズフード自体も完全に無反射とは言えないので出来れば光は当たらないほうが良い、だから撮影部はレンズに光があたらないよう多くの努力を払っている。
 レンズに当たる光をさえぎることを「ハレ切り」と言い、ハレ切りに使う黒い板は「ハレ板」と呼ばれる、撮影助手として働き始めた人間が最初にやらされるのがハレ切りだ。

 もっとも用語を厳密に定義するなら、ハレーションは画面に光源をとりこんでいるからこそ起こるわけでこれを「切る」ことは出来ない、「切れる」のは画面外に光源があるときに起こるフレアだけだ。
 更にいえばハレーションはフィルムがあるから起こる現象でありデジカメやビデオでは原理的に起こらない。

 現場ではレンズに光があたって起こる悪いことは全てハレーションと呼んでいるが、専門的な解説書でもハレーションを切れと書いてあるのを見かける、それがデジカメやビデオの解説書であれば2重に間違っているわけでもうすこし用語を厳密に使うべきだとは思う。

 さて一方フレアはレンズがあるかぎりどんなカメラでも起こりうる(レンズも鏡胴もないピンホールカメラなら起こらないだろうが)また単なる白カブリだけでなく画面に楕円や多角形の幾何学模様が現れることもある、これは特に「ゴースト」と呼ばれている。
<多角形のゴーストの辺の数はレンズのアイリス(絞り羽根)の数で決まる、6角形のゴーストが出るレンズのアイリスは6枚羽根ということだ>

 しかしフレアとゴーストは画面効果として積極的に使われることもある。
「連日30度を超す猛暑」というニュース映像のトップカットや、映画で「いくぞ南の島へ!」と主人公達が叫んだ次のシーンではギラつく太陽と派手なフレア、連なったゴーストが画面をきらびやかに飾っていることが多い。

 カメラがパンしてフレアとゴーストが画面内をグルリと横切るのもお約束であり、出っぱなしよりパンの途中で光がさえぎられ一瞬消えたりするほうがより効果が増す。
 さえぎるものはニュース映像では「空を見上げて汗を拭くサラリーマン」で決まりだし、南の島では当然椰子の木だろう。

 良い位置に椰子の葉があるならパンはせず椰子の葉ごしに太陽を捉えるものも良い、風で椰子の葉が揺れるたびに太陽が見え隠れする、そのたびにフレアとゴーストが出たり消えたりしてとても奇麗だ。

 ・・・などという絵を100回くらい観たことがないだろうか?

 ニュースはまあいい、毎年夏になると「うだる白クマ、氷をもらって一息」という絵が必ずあるしこれは風物詩だ(そうか?)毎年新たな表現にチャレンジする必要もない。

 しかしお金をいただいて劇場に足を運んでいただく映画で毎度おなじみな絵を見せ続けていいのだろうか?
 これは最初に考えた奴が偉いのであって、あとから来たやつはまた別な手を考えるべきものだ。
 「南の島」と台本に書いてあると脊髄反射でフレアとゴーストを見せる監督の映画がステレオタイプな映画である確率は高い。

 (「ハレーション」続く)   


2002年12月04日掲載

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