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物言うコンピューター達、2001年のHALは最も有名で
「月は無慈悲な・・」がSF書史上の初出(かな?)


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 64 爆発シマス

 感情のこもらない、無機質なコンピューターボイスが「自爆装置ガ作動シマシタ、秒読ミハアト1分以内デナイト停止出来マセン」というこれ以上もない緊急事態を告げるなか女航海士リプリーは煙に追われながら狭い通路を必死に走っている。
 自分は救命ボートに乗り移り、エイリアンを宇宙船ごと爆破しようと思ったところが、救命ボートの乗り場に当の化け物が居たために行き場を失い自爆装置を止めようと焦っているのだ。
 リプリーが秒読みを解除する最後のレバーを入れようとした瞬間メッセージが変わり、コンピューターは「自爆装置ノ停止ハモウ出来マセン、本船ハ5分後ニ自動的ニ爆発シマス」と告げる。

 言うまでもないダン・オバノンの傑作「エイリアン」のクライマックスだ。

 絶体絶命のピンチに陥った主人公に更に追い打ちをかけるような破滅的な内容をコンピューターが「冷静に告げる」というシークエンスは映画の中では近年になって登場した新たな恐怖の形であろう。それは「物言うコンピューター」というものが手の届く範囲になってきてから出現したものだからだ。

 私が知る限りではそれが映画に登場したのは「アンドロメダ…」(監督ロバート・ワイズ、71年ユニヴァーサル映画)が最初である。

 ネヴァダ州の砂漠の地下に作られた「ワイルドファイア研究所」は宇宙から持ち込まれた病原体を研究するために作られた施設であり、その最下層、もっとも厳重に検疫されている第5レベルが汚染された場合には自動的に核爆弾で焼却されることになっている。

 映画のクライマックスでコンピューターは間違った情報を元に核爆弾のカウントダウンを始めてしまう「爆発マデ、アト5分デス」
 まあこれは実は原作(「アンドロメダ病原体」マイクル・クライトン)を忠実に映画化しているだけなのだが、パニックにおちいった人間とまったく対称的な冷徹な音声という対比の怖さは映画ならではのものであると言えるだろう。

 というのを改めて思い出したのは知り合いの美術デザイナー氏から面白い話を聞いたからだ。
 氏はとあるCMの打ち合わせに行くために都心に車で向かったのだそうな。自慢のカーナビで行き先の制作プロダクションの住所を入力し首都高速に乗ったのだという(東京ローカルな話で申し訳ない)
 世田谷方面から3号線を上り、環状線に入り、もう少しだ・・というところでうっかり出口ランプを行き過ぎてしまった(設計がでたらめな首都高は入路、出路がどちら側にあるのか熟知していないと利用するのは難しい)

「いっけね〜さっきの出口で降りるんだった」と悔やんでいると当の制作会社の建物が窓外に見えた。そこは首都高の高架のすぐ脇に立っているビルだったのだ。
「これからどうすりゃいいんだ?」と焦るデザイナー氏にその時音声カーナビがおごそかに告げたのだと言う

 「目的地ニ到着シマシタ」


2003年01月29日掲載

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