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* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 74 剣と魔法の日々 その3
<マルチプレイヤー・オンライン・ロールプレイング・ゲーム体験記>


 北の地の果てに立つマジックタワーを目指し、私と白魔法使いである相棒は野を越え山を越え、河を渡って旅を続けた。
 旅をするうちに我々はレベルアップし次第に強力なコンビとして成長していった。
 何度目かの戦いのあと木陰で体力の回復をしていると、丘の向こうから「助けてくれ〜」と言う叫び声が聞こえた!

 瞬間、相棒は「大変だ!」と叫ぶや、体力回復中であることも忘れて声の方へ走りだした。
 丘の向こうでは強そうなモンスターに追われた旅人が一目散に逃げてくるところだった、相棒はすかさず魔法を放ってモンスターの注意を自分に引きつけた。
 突然の闖入者に怒ったモンスターは方向を変え、初心者たる我々などクリティカルヒットをくらったら一瞬で死んでしまいそうな金棒をふりあげて相棒に迫る、が相棒は仁王立ちでモンスターを睨んでいる、後ろも見ずに飛んできたけど私が遅れたらどうするんだ、と思ったが間一髪間に合って後は3対1の乱戦になった。

 こちらの体調が万全であればあるいは勝てた相手かもしれなかったが、なにしろ回復途中であったために相棒の魔力は戦い半ばで尽き、回復されなくなった私はダメージが蓄積して死に、前衛を失った相棒もたちまち死亡した。

 我々があいついで倒れるのを見て再び逃げ出した旅人がその後どうやって逃げ延びたのか、ともかくしばらくして戻ってきて、枕を並べて討ち死にしている我々(の死体)に向かって「ごめんなさい」と言ってくれたのはせめてものなぐさめというべきだろう。
 経験値大幅ダウンというペナルティを払って故郷に復活するしかなく、我々の旅はここで終わった。

 相棒とはいずれ共に修行の続きをすることもあるだろうが、こういう夢もある、つまり遠い将来どこか遠い国の街角で優雅なローブを身にまとった奴と白銀の鎧を身に付けた騎士である私が再会し、巨大なドラゴンを余裕で倒しながら「昔は、ウサギ相手に苦戦したよねえ」と笑い合うことだ。

 旅をし、戦い、苦楽を共にすると相方の性格はいやおうなしにわかる、他人がピンチにおちいったとみるや我が身を省みずに助けに走る男なら私は安心して背中をまかせられる。
 強大なモンスターを前にしながら、私が割って入ることを微塵も疑わなかった彼は私を信用しているのだろう。

 仲間になるにはそれだけの共通の経験が必要だ。
 仲間になるとは「仲間になった」と言うことではなくその過程を描くことだ。

 映画「指輪物語」は『旅の仲間』(The Fellowship of the Ring)というサブタイトルがついているわりには、登場人物達が互いにいがみあったままついに理解することなく別れたようにしか見えない。
 小説が一冊を費やしたその過程を端折り、最後にただ単に「仲間になったのだ」と言われても見ている側にはそうとは受け取れない、「仲間になる」ということを盛りだくさんな内容の映画のほんの一部として扱うのはやはり無理があったのだと私は今にして思った。


2003年04月09日掲載

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