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* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 91 剣と魔法の日々 その7
<マルチプレイヤー・オンライン・ロールプレイング・ゲーム体験記>


 巨大な骨が散乱する峡谷の奧にある「大迷宮」についに我々はたどり着きその中へと踏み込んだ。

 狭い通路と大空洞、上下2層に入りくんだそこはまさしく迷宮といってよく、各種モンスターが徘徊する危険地帯だったがバランス良く組まれ、志気旺盛な我がパーティーは危なげない戦闘を繰り返し、ついにこの作戦の最大の山場を迎えた。
 調査すべき目的地まであとわずかという地点、狭い通路の前に立ちはだかる巨大サソリである。

 そのサソリが倒せるかどうかが全てだ、と友人から、街の人から聞いてきた相手がついに眼の前に現れた。
 同行のメンツからもおお! という声が漏れる、赤く燃える眼、黒光りする体、見上げるほどに反り返ったその尻尾、なにからなにまでがまがまがしい怪物である。

 ここまで来る途中でうけたダメージを回復し、前衛たる私ともう一人の戦士および格闘家は焼き肉をほうばる。これは攻撃力を一時的に高める効果があるとされる食べ物だ、後衛陣は魔力回復に効果のあるジュースを飲み干す。

 あとは全力で戦うことだけだ、私は自慢の長剣を引き抜き、かかれ! と叫んでサソリに向かって駆けだした、全員負けじと走り出す。
 あと一歩、それで私の剣がサソリに届くというその瞬間、まったく動きを見せなかったサソリがビクッと痙攣し、驚くべき早さで前方に走り去った、私の剣は空を切る、何が起こった?
 見るとサソリは別な2人組と戦い始めたではないか、私が斬りかかる直前にサソリの向こう側の通路からやってきた2人組のどちらかが魔法でサソリを引きつけたのだ。

 2人の装備をみてとれば我々など足下にも及ばない戦士と格闘家だ、彼らはおそらくサソリの爪を狩りに来たのだろう、爪は工芸品の材料として高価で売買されているのだ。

 我々が見守るなか2人はあっさりとサソリを倒し、必要なものを手に入れたのかさっさとどこかへ消えてしまった。

 あ然としたのは我々である、私は所在なく剣を収め、皆に声をかけた。ともかく依頼された仕事は完遂しなくてはならない。
 最大の山場は越してしまったのでことはすぐに済んだ、あとは帰って報告するだけだ。
 これで我々の格は上がるはずなのだが・・と思っているとチームの中で一番勇ましい女魔導士が「隊長、このまま帰るんですか?」と聞く、まさしくそれは私の言いたかったことだった、このまま帰れるものか。

 どうせのことなら反対側の出口へ抜けようではないか、このまま迷宮の探検としゃれ込もう、という私の提案には全員が賛同した。
 せっかくの焼き肉がもったいないしとか、いやジュースも買うと高いんですよ〜、などと冗談を言い合いながら、我々は意気揚々と迷宮の奥に向かって歩きだした。

 前にも言ったような気がするのだが、それはもちろん間違っていた。



※編集部より
「剣と魔法の日々」は不定期掲載です。
 はじめから読みたいという方は↓からリンクできます。

 その1 その2 その3 その4 その5 その6


2003年08月20日掲載

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