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* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 101 マンガ的表現 その6

 マンガやアニメではよくある表現ながら、実写映画では難しいという話をもうすこし続けたい。

 超能力物の作品では、登場人物の服が念動力による攻撃で、あるいは当人がなにかの能力に覚醒した、という表現でその服がビリビリに裂けるというカットがよくある。

 何度も言うようではあるけれどまあ描くのは簡単ですわな、描きゃいいんだから(!)しかしこれは実写になるともう不可能に近い。
 つまるところ布は強く、ちょっとやそっとでは破けたりはしないわけだ。

 もちろんピアノ線を結んでひっぱったところでどうにかなるようなものではない、どうするかと言えばこれはもう最初から破っておくしかない。

 といってもちろんそれでは着られないわけで、ばらばらに切ってしまったものを一応の形にする必要がある、超能力を使えるわけでない操演部は両面テープのごやっかいになるわけだが、両面テープには布のような柔軟性も伸縮性もなく、結果、みょうにごわごわとした衣装のできあがりとなる。

 それを役者に着せる、そろりそろりと、にもかかわらずあっちがハラリこっちがポロリとはがれ落ちる。はがれ安いように、バレにくいようにとチョンづけしてあった両面テープはそのたびに大きく大胆に張られてゆく、しまいには原型とは似ても似つかない珍妙な衣装となる。

 そして人海戦術だ、その一枚一枚にピアノ線を結び、お手すきのスタッフを集めて一人2本づつ(片手に一本づつ)持たせる。
 役者のまわりを取り囲み、「せーの」で引っ張ってもらうわけだ、仕掛けとも言えないような仕掛けである。

 出来た絵は、「もとから切り離してあった布にピアノ線をつけ、回りで引っ張ったような」ものにしかならない(!)

 話が出るたびに私は監督を説得して、このたぐいのコンテはつぶしているのだが、たまに世に出てしまうこともある、操演技師が「うまくいかないから止めたほうがいい」とまで言うカットはヤメにしたほうがいいと思うぞ。


2003年11月05日掲載

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