* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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Roll 103 マンガ的表現 その8

 実写で迫る宮崎アニメ、その2という話だ。

 飛ぶものが好きであるらしい宮崎氏の作品には華麗な飛翔シーンが多く出てくる。
 飛翔するものが主役であるとさえ言える。

「紅の豚」はまさしくパイロットが主役であるし、「天空の城ラピュタ」は空自体がお話の舞台だ。「風の谷のナウシカ」「魔女の宅急便」ではヒロインは空を飛んでいるし。「未来少年コナン」にも飛行装置は数多く登場、ラストの大立ち回りは巨人機の翼の上だったりする。

 その飛翔シーンで特徴的なのが、飛行機が雲を割って浮上してくるカットだ。
 実際の雲があのように中にいる飛行機の姿を完全に覆いかくすほどの密度を持っているか疑問だし、切り裂かれた雲がまるで高速で走るボートが蹴立てた波のようなふるまいをしているのも変ではあるが、ともかくカッコいい。

 これを実写で再現する機会を与えてくれたのはまたしてもガメラ(「ガメラ3 イリス覚醒」)だった。
 雲海の上で敵怪獣(?)イリスがF-15戦闘機を追跡、攻撃していると、ガメラが雲を割って浮上し両者の間に割り込むというカットだ。

 樋口特技監督の絵コンテにはまさしく波をけたてて進む船のごときガメラの姿が描かれている。
 アニメ畑出身の樋口氏はアニメ・マンガ由来のイメージが多く、頭を悩ませることも多いのだがこれだけは待ってましたというものだった。

「液体窒素を使ったらあれはいけるんじゃないか?」というアイデアを長年あたためていたからだ。
 具体的には、

 ガメラを上向きに固定し、カメラは真上からそれを狙う。
 上から滝のように液体窒素を流し落とす。
 ガメラに命中した液体窒素はそこで一気に蒸発して真っ白な煙となる。
 液体窒素の滝の中でガメラを甲羅方向(カメラの見た目では上方向)に動かす。
 ガメラが白い煙(雲)を割って浮上してきたかのように見える。

 という作戦だ。

 頭の中で考えただけの仕掛けは、実行してみるとあれこれと実情にそぐわないところが出てくるものだが、この仕掛けだけは思ったとおりに進行しほとんど試行錯誤することもなく撮影終了となった。

 ガメラ3の中では私の自慢の1カットなのだが、前後がずーっとフルCGなので、たった1カット混じっているこのカットもCGにしか見えないところが難点ではある。



※編集部注:

「ガメラ3 イリス覚醒」
(大映・徳間書店・日本テレビ放送網・博報堂・日本出版販売/配給=東宝・1999年)

「未来少年コナン」(日本アニメーション・1978年)
「風の谷のナウシカ」(二馬力・徳間書店・博報堂/配給=東映:1984年)
「天空の城ラピュタ」(二馬力・徳間書店/配給=東映・1986年)
「魔女の宅急便」(角野栄子・二馬力・徳間書店/配給=東映・1989年)
「紅の豚」(二馬力・TNNG/配給=東宝・1992年)


2003年11月19日掲載

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