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紀行ものにおいては、ローカル電車はたいてい望遠圧縮のかかった陽炎の彼方からやってくる


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 141 Viewpoint <13> Telephoto lens (2)

 ダスティ・ホフマンのデビュー作「卒業」(1967年/米国)そのラストで主人公ベンジャミンは結婚式場に乱入し彼女を奪取する。
 今まさに誓いの口づけをという瞬間に飛びこんでくる真実の恋人、というシチュエーションは衝撃的であり、その後も多くの作品に登場し、あるいはパロディ化されている。映画人における一種の原体験、古典と言えるものだろう。

 彼女は他の男と結婚するとベンジャミンに宣言し身を隠してしまう。四面楚歌の彼に手を貸してくれるものは誰もいない。しかし彼女をあきらめられないベンジャミンは手をつくし、ついに式当日に式場を探しあてる。
 車を飛ばして式場に向かうが車はガス欠、最後に両の足で走り始める。

 孤独な追跡のラストカット、ベンジャミンは画面奥から手前に向かってまっすぐ走ってくる。しかし走れども走れどもその姿は大きくならず、彼は(教会があるであろうスクリーン手前に)近づいてこない。その間実に20秒(今見て計った)観客はその焦燥を共有する。

 いくら走っても近づいてこないように見える望遠圧縮効果、その効果をいかんなく発揮した名カットと言えるだろう。

 映画は機材によって発展し、あらたな効果と表現を獲得していくという好例である。

 次回はさらに進んだ望遠圧縮効果の使いかたのお話だ。



………編集部よりお知らせ………

今週より河野朝子さんの週刊動画エッセイのページで「根岸さんが動クンです!」がスタートします。こちらからどうぞ→『根岸泉の特撮入門 その1』

2004年09月08日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部