* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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マイバイクでテストしてみます


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2枚の写真を撮る際バイクは同じ場所にとめたままです




Roll 143 Viewpoint <15> Zoom lens (2)

 自分の保護すべき市民が目の前でサメの餌食になった時、アミティ島の警察署長ブロディの周囲の景色は一瞬で遠ざかり、狭い砂浜は広くなる。
 ショック・喪失感・絶望感をみごとに視覚化したこの効果は絶大だ。

 この効果はいかにして生まれたのであろうか?

 始めブロディを捉えているのはズームレンズの望遠側だ、当然、望遠圧縮効果がはたらいてイスに座っている彼と背景の景色はくっついて見える。
 ここで一気にズームを引いて広角にする・・わけだがそのままだと当然ブロディ自体も小さくなっていってしまう。

 ここで「小さく見えていくのを打ち消すだけカメラがトラックアップして行く」のだ。

 ズームで大きく見せていたブロディを今度は近寄って大きく見せるわけだ。
 うまくやれば画面上彼のサイズは変わらない。ここでは後半ズームを追い越して(?)トラックアップしていくので、ブロディはむしろ大きくなっていく。
 一方望遠圧縮で近くに見えていた背景は今度は広角レンズの効果で遠ざかり遥か彼方に見えるという仕掛けなわけだ。

 ブロディはアップに、しかし背景はどんどん遠ざかって小さくなる。まさしくズームなくてはありえなかった視覚効果だ(ズームレンズの発明者だってこんな効果が生まれるとは思ってもみなかっただろう)


<ちなみによく見ると、このカットだけブロディの背景が違っている。彼は海岸に向かって座っていて背景にはそれまで砂防の柵が見えていたのだが、このカットだけそうなっていない。
 チラっとだけ見えていたビーチハウスの土台が画面左に大きく見えることから、どうやら座る方向を90度近く反時計にひねったと思われる。
 なぜと言えば、これは最初のカメラ位置が確保できなかったためであろう。
 つまり、本来の海向きのままだと、カメラのスタート位置、つまり「ズームでいっぱいに寄ったときバストショットになるカメラポジション」が海の中になってしまうのだ。
 しかたないのでブロディの向きを変えカメラが波打ち際と平行に移動するようにしたのだろう>


 理屈がご理解いただけたろうか?
 日本ではこの技法を「逆ズーム」と呼ぶ向きもあるようだが定着しているとは言えない。
 ともあれ(何度も言うようだが)舞台、演劇鑑賞ではありえない、新たな機材が創出した新たな見せ方の一例である。


2004年09月22日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部