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俯瞰撮影で有名な「イントレランス」から俯瞰用の撮影台は「イントレ」と呼ばれる
でも建築資材屋さんから借りてくる場合は「ローリングタワー」と言わないと通じない


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 158 ひむろ杉

 フラクタルという幾何学の言葉がある。

 「部分と全体が相似形になっている図形」簡単に言えば、離れて見ても寄ってみても形が似ている物を言う。

 よく言われるのが海岸線や雲、あるいは川の形だ。
 マクロな視点から見ても細部を見ても同じような形状をしているので、比較するものがなければ、それがどんなスケールのものかわからない(輪郭だけ示されたらそれが航空写真レベルの海岸線なのか小さな入り江なのかわからない、または大河なのかせせらぎなのかわからない)そういうものがフラクタル図形だ。

 他によく引きあいに出されるのが木で、木全体もその枝も、枝の一部である小枝も似た形をしているという。しかし、このたとえは比較的早く破綻してしまう。
 木の種類にももちろんよるが、小枝を分解するともはや木に見えなくなってくる。
 長さ数センチといえばもはやそれは単なる棒だろう。

 さてしかし、ここにフラクタルのお手本のような木が存在する。それが「ひむろ杉」だ。
 ひむろ杉は全体を見てももちろん杉だが、枝一本でも杉だ。小枝を見ても杉だし、さらに細かくしていっても杉に見える。数センチというレベルになってもまだ杉に見える。

 これは素晴らしい。なににとって素晴らしいのかと言えばそれは特撮映画だ。
 特撮映画のミニチュアセットは強制パースというもので出来ている。手前は大きいサイズのミニチュア、奥にいくにしたがって小さいサイズのミニチュアを置く手法だ。
 人は遠くにあるものは小さく見えるという経験則にしたがって、セットに置かれた小さいミニチュアを遠くにあると思いこむので、狭いステージがより広く見えるというわけだ。

 それはとても効果的な手法なのだが縮尺の違うミニチュアをいっぱい用意しなければならないという不便さがある。しかし木に関してだけはそうではない、ひむろ杉があるからだ。

 街路樹を作るにせよ、森を作るにせよ、必要とされる長さで切ればよい。1メートルで切っても、10センチで切ってもひむろ杉はちゃんとした一本の杉に見えるだろう。

 だからひむろ杉は特撮現場の必須アイテムなのだ。そのひむろ杉の飾り込みに新たな手法を用いたのがトニー君である・・という話が次回だ。


2005年01月12日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部