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ミニチュアの木をせっしゅする
(※これはひむろ杉ではありません、ごめんなさい今現場にないです)


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 159 Tony

 特撮映画では怪獣を大きく見せるために縮尺された街を作る、そしてこのミニチュアセットは「強制パース」で出来ている、と先に書いた。つまり街のすべてが同じ縮尺率の建物でできているわけではない、ということだ。

 怪獣のそばだけが、正しい(つまり想定された怪獣の大きさに合った)縮尺率なのだ。(伝統的に1/24だったりする)
 それよりもカメラ寄りのミニチュアは大きい(縮尺率の小さい)もので、遠くにいくにしたがって小さい(縮尺率の大きい)ものになる。
 どこにどれくらいのものを置くかは、ファインダーを覗いたデザイナーのセンスひとつにかかっていて、計算や図面で割り出せるようなものではない。

 さてここに画面奥に伸びる並木道があったとする。本当の並木道なら同じサイズの木が同じ間隔で並んでいるはずだが、つまりミニチュアセットではそうなっていない。
 手前に大きな木があり、奥にいくに従って小さくなるように並んでいるわけだ。

 結局木はファインダーを覗きながら一本一本長さを調整し、間隔を見ながら立てていくことになる。

 「木は一本一本立てる」これは特殊美術スタッフにとって常識であり、疑ってみることもしない鉄則だった。

 しかしここに美術助手の一人であったトニー君が新たな手法を考え出した。木をあらかじめ同じ高さに切りそろえ、同じ間隔でタル木に並べて立てておくというものだ。強制パースの否定? そうではない。
 並木道が奥ではなくカメラに平行に伸びて行くものなら同じ高さ、同じ間隔で構わないのだ。

 また木を一杯植えて森を作る場合、一本一本立てていったのでは手間がかかって仕方ない。
 前もって木を密に立てたタル木を何組も作っておき、現場でそれを並べればあっという間に森になる。
 均等に並んでいるのが目に付くようなら最前列だけ、それらしく木を立てればよい。奥はこんもりしていればいいのであって、一本一本立てていくのは時間の無駄なのだ。

 外部の人間が聞けばバカみたいな話に見えるだろうが、特撮の現場ではこれは画期的なことだった・・という話は次回に回そう。 


2005年01月19日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部