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火薬連続点火装置、通称「シャミセン」 筆者作(ケースから手作りしたら10日かかりました)


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 184 コミュニケーション その6・樋口組

 ガメラ特撮班、別名樋口組のメインスタッフはガメラ1〜3作までほとんど変わらなかった。
 全員気鋭のマニア揃い(?)であり、特撮映画は当然としてSF・アクション映画、はたまたアニメ・コミックにいたるまでその造詣は深い。

 自分が知る限りの、どんな映画のどんなカットを例にあげても、打てば響く反応が返ってくるので打ちあわせが非常にやりやすい、いきおい話の随所に古今東西、さまざまな映像作品の名前が登場する。

(ロケバスの中では全員本気で映画題名しりとりしていたりする、自分の映画への情熱が試されていると思うのか皆必死だ、こんなマネをする組を他で聞いたことがない)

 ある時制作部の助手にHくんという若い人が入った。
 制作部というのはお金の管理からスタッフの福利厚生、外部との交渉から、車両の手配、弁当の発注までをこなす事務部門である。
 さてこのHくん、人手が足りなくなった制作部のボスがどこからか引っ張ってきた人で、まじめで仕事の出来る映画の好きな好青年であったが、特段に特撮が好きというわけのものではなかったらしい。

 あるとき用があって彼の運転する車で移動していたところ、思い詰めた様子で「根岸さん、僕は樋口組でやっていけるんでしょうか?」と言う。
 驚いて「なんで? よくやってるじゃない」と聞くと
 「打ち合わせを聞いていても、僕にはみんなの言っていることが全然理解できないんです」と言う。
 「ま、まあ、細かいことまでも理解する必要はないし、大丈夫でしょ」とフォローしたものの、打ち合わせの内容が理解できなくても勤まるなどというのは制作の仕事に対して失礼な話である。
 またいかに縁の下の力持ちとは言っても、どのような映画が作られようとしているのか理解できぬまま仕事をするのでは悲しいだろう。

 特撮者の天国は部外者にとっていごごちの悪い場所なのだなあと、言われればあたりまえなことをあたらめて感じたのであった。 


2005年07月27日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部