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* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 208 メイキング その7

 庵野・エヴァンゲリオン・秀明監督のメイキングはドキュメンタリーとして一級だったが、これは一種の変化球であり、ごく普通に映画制作の舞台裏を見たいという映画ファンの希望に添うものではなかったように思う。

 しかし、あるオリジナル特撮ビデオにおいて、そういう意味では正統的な、つまり特撮の裏方の仕事をキチンと記録しようとする人たちと仕事をしたことがあった。

 彼らは演出1人、カメラマン1人、助手1人、当然カメラは業務用というニュース映像並の体制を取っていた。そしてスタジオに常駐し、取材し、映画ファンや特撮マニアが何を知りたいか、何を見たいかを考えながらメイキングを撮った。

 「根岸さんその手に持っているのが火薬のスイッチですね? もうちょっと上で構えてください、で監督の本番の声で電源入れてもらえませんか、スイッチのパイロットランプが光ったところで、ピントを奥に送ります、でボケたスイッチと赤いランプごしに奥の戦車が見えていて、カチンコで根岸さんがスイッチを押すと奥の戦車が吹っ飛ぶわけです、かっこいい絵になりますよこれは」

 などと人を演出するのにはまいったが、たしかに劇的でありしかも操演の仕事がわかりやすい。こういう演出が出来るということは彼らがいかに現場を勉強したかという証拠だろう。

 徹夜あけの日、スタジオを出たら外に制作部心づくしのビールがバケツで冷やされていたことがあった。私は下戸なので取らずに通り過ぎたが、あとで「根岸さんなんでビール取らなかったんですか」と怒られた。
 どうやらスタッフも気がつかないほどのロングにカメラを据え「疲れ果てたスタッフが一人、二人とスタジオを出てくる、彼らは疲れた体をビールで癒し家路につくのであった」という絵を望遠圧縮の印象的な構図で撮っていたらしい。
 私だけ取らなかったので「使いずらいじゃないですか」ということらしい。

 やりすぎだっての、しかしこのメイキング映像「特撮愚連隊」は世に出ればきっと名作になっていたと思う。特撮のバイブルにすらなったかもしれない。クランクアップと同時にスポンサーが倒産しお蔵になったのが残念だ。


2006年01月25日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部