「今日もカメラは回る」 文・写真/根岸泉 --->Back Number |
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Roll 215 アクシデント −現場力・その4− 「現場力」それは映画屋が等しく持つべき能力である。それはスタジオの空気を吸い、撮影現場の最前線で頭と体を使って養っていくものだ。 さてここに特撮の神様、ダグラス・トランブルという人がいる。 「2001年宇宙の旅」「未知との遭遇」「ブレードランナー」「スタートレック ザ・モーションピクチャー」「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ライド」(USJのアトラクション)など赫々たる戦果を挙げた特殊効果マンである。 そしてこの「スタートレック ザ・モーションピクチャー」だが、これはパラマウントの社運を賭けた大作だった、しかしその特撮監督は初めロバート・エイブルという男にゆだねられていた。 エイブルは当時一流企業のCMを多く手がけ、その華麗な特殊効果が話題になっていたスター演出家である。 しかしエイブルは数百万ドルの経費と21ヶ月の準備期間の半分を費やしてもまともな映像を生み出せず、ついにはクビを宣告されてしまった。 どうやら彼はミニチュアのサイズやカメラの動きをあらかじめ計算し、すべてを中央コンピューターで制御する、夢の特撮工場を造ろうとしていたらしいのだ。 つまり計算機室で撮るべき絵を決定すれば、あとはいっさい面倒な手作業をすることなく全自動で特殊撮影をしてくれるロボットスタジオである。 残り9ヶ月という危機的な状況の中で映画を救うべく特撮監督を引き受けた(そしてそれをなしとげた)ダクラス・トランブルはエイブルの夢(ある意味壮大な夢だが)に対してこう言っている「実際の模型を前にして、カメラをのぞいてみなけりゃ何もわからない」と。 おそらくトランブルも「現場力」という言葉の意味を正しく理解してくれる人間のひとりではないだろうか。 アクシデント、終わり。
2006年03月22日掲載
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