* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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印象派?


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Roll 219 完成品のイメージ4 −ふたたび円空−

 空というのはチリと水蒸気に充ちていて確かなものは何もなく、つかみどころがない、だからホリゾントはたとえフォーカスが合っていても霞んで見えるように描いてある。
 それがどういうことかと言うと、つまりはアップでみればボケボケの絵であるということなのだ。

 はっきり言ってホリゾントを間近で見たら何が描いてあるのか理解できないだろう。
 手が届く所ほどに近寄ってしまうと漠然としたグラデーションがあるだけで何がどう描かれているのかまるでわからない。数メートル離れて初めてそれが雲の一部であることが把握できるという具合だ。

 それは空に限らずホリゾントに描くものはなんでもそうなのだが、遙か遠くにあって「詳細など見分けられなくなっている感じ」を出すためには「詳細など見分けられない絵を描く」しかないわけだ。

 ではそんな「詳細など見分けられない」絵をどうやって描いたらいいのだろうか?

 またホリゾントはその幅が何十メートルもあるので、全体に雲をどう配置しするか計算しておかなくてはならないし、いま描いているのがどの雲のどこの部分であるのか常に把握している必要がある。

 ではどうやって、いわば自分の位置を把握すればいいのだろうか?

 そのためにはホリゾントにまずおおまかに雲を描き、少しづつディティールを描き込んで行くより他はない。
 だから普通の背景屋さんはちょっと描いては離れ、ちょっと描いては確認する。
 ホリゾントに近づいたり離れたりを繰り返すわけだ。遠く離れてじっくりと全体感をチェックすることも希ではない、しかし前述のS氏はそうではない。

 氏はホリゾントから離れることなく、セットの左端から描き始め、右端に来たときには完成しているのだ。

 これは超絶技巧である。

 円空は木の中に彫り出すべき仏像の形が見えたという。S氏は最初からホリゾントに雲が見えているのだろう。


2006年04月19日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部