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宙がえり撮影中、カメラ横倒しをごまかすためにフォッグをいっぱい焚いています


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 223 完成品のイメージ8 −宙がえり−

 TVの連続特撮ものは前もってどういう話を撮ることになるかわからないからホリゾントを特徴なく作らなくてはならないという話をした。
 ここで付け足すならばTVの場合ホリゾントを「どういう向き」で撮るかわからない、ということもある。

 「向き」とは何かといえばそれは「どっちが上か」ということだ。

 たとえば「怪獣が真っ逆さまになって上空より落下する」というカットがあったとする。
 操演部がスーツアクターに吊りベルトを装着してピアノ線で吊り上げる・・のはいいが逆さまには出来ない。
 ただでさえ息苦しい着ぐるみを着て更に逆さ吊りでは頭に血がのぼって演技にならないだろう。
 そこで怪獣は頭が上のまま、カメラを上下逆にして「真っ逆さま」のフリをすることになる。日常的なテクニックだがその時には雲まで逆さまに映る。したがって特撮ステージの雲は上下逆になってもおかしくない形状であることが求められるのだ。

 またカメラが横倒しになることもある。

 ミニチュアの飛行機が宙返りをするシーンがよくある。
 どんなものにせよ吊ってあるものを縦に回すのは難しく、水平に回すのは簡単だ。そこで飛行機を90度傾けて吊り、コックピットが内側になるように回転させる、それを90度横倒しにしたカメラで撮影すればアラ不思議、飛行機は宙返りをしているように見える(と言うか、そうとしか見えない)

 発想の転換で簡単にかつ効率良く、というのが特撮の醍醐味だがこの場合問題が一つある、雲まで横倒しになってしまうということだ。

 雲はその成り立ちから言って基本的に横に伸びた形をしている。特徴ないのが特徴の特撮ホリゾントはもちろんそういった基本の雲が描かれている。

 だからカメラを横倒しにすると雲が縦長になってしまう。いくらなんでもこれは変だ、ということで特撮ステージのホリゾントには雲の少ない部分が必要なのだ。

 もちろんそれも空の1部分であるわけなので、全体として違和感があっても困る。
 たとい違和感がなくとも「切り返し問題」があるので印象深いものであってもいけない。

 特撮TVシリーズの空がどんなに注意深く作られているかご理解いただけたろうか?

 さらに続く。


2006年05月24日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部