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* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 226 完成品のイメージ11 −原型師−

 「フィギュア」という日本人好みの細密、精細な人形の市場があり、原型師という職業がありそのトップ中のトップが竹谷隆之という男である、というのが前回のお話だった。
 彼の得意なジャンルは怪獣・怪物・妖怪といった異形の生物である。

 彼がなぜトップであるかと言えば、当然ながらまずその造型技術の高さがある。
 全体のバランス・フォルムといったデッサン力はもちろん、ディティールの細かさ、はたまた質感−つまり皮膚だ、革だ、金属だ、布だ、堅そうだなどなど−の表現が抜群なのだ。

 さらにどういうポーズを取らせたらそのキャラクターの性格が際立つかという「見せ方」も抜きんでている。

 またフィギュアは本来映画に出たあのヒーローを、アニメで見たあのロボットを、縮小、立体化するものだが、トップクラスの原型師は映画そのままウリ二つというのではなく独自の解釈をこめた作りをする。

 具体的にいえばたとえば怪獣だ。怪獣のデザインは中に人が入らねばならないという制約があるわけだが、こんな生物がいたとすればその姿は本来こうあるべきだ、と変えてしまう。いわばその世界観の中でより「リアル」な造型に変えて提出してみせるわけだ。

 あるいは小物を使った演出というものもある。
 フィギュアは基本的には人形だけを見せるものだが、場合によって何か持っていたり、周囲に小さいながら「地面」が付いていたりする。
 普通は原作にある「有名なシーン」を忠実に再現するためのものだが、それら小道具を使って架空のシーンを作ってしまうのだ。つまり原型師独自の解釈による語られざるエピソード、あるいはアナザーストーリーということだ。
 物言わぬ人形が一体そこに立っているだけなのに、見るうちにそのキャラクターが背負うドラマを感じさせ、感動を与えうるあたり原型師はすでに一個の演出家であると言えるだろう。

 さてそのような原型師の頂点に立つ男は、その業界では神または雲上人と言える人物であり、前回述べたように「世界のタケヤ」とも「東洋一の造型師」とも呼ばれるのだが私は「竹ちゃん」と呼ぶ。

 なんでちゃんづけなのかということは次回に。


2006年06月14日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部