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怪獣のツノを折るために火薬仕込み中の私
造型の知識がないようでは操演は勤まりません


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 229 完成品のイメージ14 −奇跡−

 主演女優のミニチュアが欲しい。
 本来遙か以前に用意されるべき造型物を撮影の当日、それも今のカット用にたった今欲しいと監督が言い出した時、それを可能にするのは竹谷隆之、のちの「世界のタケヤ」しか居なかった!

 ・・などと映画のキャッチコピー風なもの言いをするまでもなく、監督は竹ちゃんが居るからこそ無理を言っているのはあきらかだった。

 まったくわがままなんだから! とブツブツ言いながら竹ちゃんは身長20センチほどの人形を作り始めた。
 材料はスカルピーという造型用の粘土、扱いやすく完成後にオーブンで加熱すると硬化するプラスチック粘土だ。
 これをコネコネしながら竹ちゃんはまず顔を作る、人形は顔が命だねえなどと思いながらそばで見ているとほどなく上体の制作に移った。

 このヒロインは特殊なコスチュームを身につけているのだが、そのディティールはすっかり頭に入っているらしく、何かを参考にするわけでもなく黙々と手を動かす。
 手で形を整え、細かい部分はヘラやアートナイフを使い、盛ったり削ったりなでつけたり、見ていると質感の表現に紙ヤスリを押しつけたりしている、つまり部分的に最終仕上げをしながら進んでいるということだ。

 竹ちゃんは手を休めることなくやがて下半身の制作に移り、形を整えるところから表面仕上げまでを行いつつ靴に至った。

 時間ないからこんなもんしか出来ないよ、と言いながら初めて竹ちゃんが手を止め、全体像を確認したとき、そこには完璧なミニチュアが存在した。

 時間は全部で30分ほどだった。
 奇跡を見た、とその時思った。

続く 


2006年07月05日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部