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グリーンバックで「斜面に落ちる瓦礫」の合成素材撮影中。
こういうエッジがぼやけているものでもキチンと合成できるようになったのは最近です。


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 246 撮影機材と撮影効果 <メリエスの時代 その6>

 「多重露光のメリエス」の初期作品に「ゴム頭の男」(1903年)というものがある。

 机の上にメリエスの頭(だけ)が乗っている、そこにもう一人のメリエスが登場する。
 現れたメリエスは空気入れで机の上の「頭」に空気を送り込む。すると「頭」はどんどん膨れていきやがて破裂してしまう、という短編だ。

 どうやって撮影するかというと、黒幕の前でまず「机と空気を送るメリエス」を撮影する。

 次にフィルムを巻き戻し、首以外全て黒布で覆ったメリエスを撮影して首だけが机の上に乗っているように見せかけるのだ。

 首が大きくなるのは、カメラに近づくことで表現する。メリエスは車輪の付いた椅子に座ってゴロゴロとカメラに向かって前進しているわけだ。

 近づいてくるものを黒幕前で撮影しても、そのままでは近づいてくるようにしか見えないだろう。
 前景となる舞台を固定することで、前に移動している物を膨張しているように見せかける、というのは秀逸なアイデアである。

 ところで「ガメラ−大怪獣空中決戦−」で敵怪獣ギャオスが、林の中で急速に成長するカットがある。
 これを実現するために我々特撮班はまず奥の林(背景)と手前の林(前景)を別々に撮影した。

 ついで「脱皮する芝居」をしているギャオスをトラックアップ(移動車で寄って行く)して撮影し奥と手前の林の間に合成した。

 背景と前景の林はサイズが変化しないので、その間にいるギャオスはトラックアップしているようではなく「大きくなっていく」ように見えるというわけだ。

 ブルーバック合成のおかげで少しは進化しているが、「舞台」を固定すればカメラに近づいてくる物を膨張しているように見せることが出来る、という100年以上前に開発された技をそのまま使っているのだ。

 前々々回、同じ顔の人間がいっぱい出てくる面白さを狙ったCMが今でもあると言った。メリエスが「まだやっているのか」と言うだろうと。
 しかしその場合は言い訳がないでもない「先生、効果は似てますがやっていることは全然違うのです」と。
 しかし、これは言い訳が聞かないかもしれない、先生はこう言うだろう「俺の考えたやり方を100年立った今でもやってるのか」と。

続く


2006年11月15日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部