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陣取り合戦


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 253 <フィルムとコマの話 その6> デジタルサウンド

 4チャンネルで頭打ちだった映画のサウンドシステムを、更に進化させたのはデジタル技術である。

 「話が専門的になってきた?」と思うかもしれないがそうではない。

 映画を観るため上映時間などを調べている時、映画やそれを上映している劇場に「DTS作品」とか「SDDS対応スクリーン」とか書かれているのを見たことがないだろうか?
 あれはその映画がどんなサウンドシステムを採用しているか、そしてその劇場がどんな上映方式に対応しているか示しているのだ。

 映画において音響は重要な要素だし、入場料はどこの映画館でも同じなのでどうせなら先進の音響システム対応の劇場で観たほうがお得だと思う。
 もちろんそれがどんなシステムなのかを知らなければ意味がない。 

 現在のデジタル音響システムは以下の5つだ。

 『ドルビーSRD』
 正面(注1)から「左・右・中央、低音」、客席側方(サラウンド)から「右・左」の5.1チャンネルを出力する。
(低音チャンネルがフルレンジではない<低音から高音までのデータ幅がない>ので6チャンネルとは言わない)

 『DTS』
 フィルムに同期信号を記録しておき、CDから上記と同じ5.1チャンネルを出力する。

 『ドルビーSRD−EX』
 SRDの拡張規格でデコーダーによりサラウンド右、左からバックサラウンドを取り出して6.1チャンネル化する。

 『DTS−ES』
 DTSの拡張規格でやはりバックサラウンドを追加した6.1チャンネル

 『SDDS』
 正面「左・右・中央、低音」サラウンド「右・左」の6チャンネルに加え、大スクリーンの劇場に向けて左と中央の間にEXレフト、右と中央の間にEXライトのスピーカーを配置した8チャンネルを出力する


 以上である(注2)

 ところで「デジタル信号」といってもそれは光学式に、つまり光の明滅としてフィルムに焼き付けられている。そしてどのシステムを導入した作品であっても、そのシステムを持たない映画館のために従来のサウンドトラック(アナログ)が焼き込まれている。

 それは「現像処理のみでフィルムの複製が可能であること」そして「旧式の設備しか持たない劇場でも上映可能であること」という映画業界の要請に従っているためだ。

 ところでドルビ−SRDは、デジタル信号が1秒以上途絶えると音声を自動的にサウンドトラック「ドルビーSR」に切り替える(「これをSR落ち」と言う)
 他の方式も似たような仕掛けを持っている、つまりサウンドトラックはデジタル信号の読み取りエラーを起こした時のバックアップでもあるのだ。

 歴史のあるアナログ式サウンドトラックは、このように信頼性においてゆるぎないため、映画がフィルムで映写される限り標準のフォーマットとして使い続けられるだろう。


※注1:ほとんどの映画館では正面のスピーカー(群)はスクリーン裏に設置してある。劇場のスクリーンはサウンドスクリーンと呼ばれ音が透過できるように微少な穴があいている。

※注2:劇場の紹介に「THXシアター」というものがあるが、あれはルーカスフィルムによる総合的な視聴環境の規格(客席の騒音レベルとか、映写機とスクリーンの角度とか、機材の品質とか)であってサウンドシステムを指す言葉ではない。


2007年01月10日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部