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グリーンバックで合成用のホコリ素材撮影中。


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 264 <フィルムとコマの話 その17> グレイト!

 ダクラス・トランブルはユニバーサル・スタジオの『バック・トウ・ザ・フューチャー』(1985年/米国)の映像も担当している。
 私の友人、合成技術者のM氏はそれに参加していた、彼の自慢は「僕はダグラス・トランブルにグレイトと言われた男ですよ」というものだ。

 ヤンキーにとってGreatって「OK!」というくらいの意味なんじゃないの? とも思うが、何しろこちらは神様から直々に声をかけられた経験などないわけで、それを言われると「恐れ入りました」と答えるしかないのである。

 などと卑近な話をしても仕方ないので別な例を挙げよう。

 昔、東京国際映画祭のイベントの一環として「SFXアカデミー」というものが行われた。アメリカから各方面のSFXマンを呼んで少人数相手に講義をしてもらうというものだ。

 マットペインターとかモーション・コントロール・オペレーターとかスペシャル・メイクアップ・アーチストとかいう専門家の講義がある中、特撮スーパーバイザー、おおぐくりに「特撮監督」という立場で話をしたのがリチャード・エドランドだった。

 エドランドはなにしろ天下の『スターウォーズ』の特撮マンであるわけで、特撮界随一のビッグネームといってよい。
 それゆえの人選だったと思うのだが、わたし的にはエドランドの評価は高くない。「こういうやり方でしか撮れないんだから、こういう画質になってしまうのは仕方ないよね」という絵をときどき見せてくれちゃうからだ。まあほんとにときどきではあるのだが。

 そのエドランドの講義はつつがなく終了した。照明が点いて会議室全体が明るくなったと思った瞬間、会場の客(ほとんどが日本の特撮関係者だ)が一斉に部屋の後ろに集まった。
 前のほうに居た私には初めなにが起こったのかわからなかったのだが、ダクラス・トランブルが一番後ろの席に座っていたのだ。同業者の講義を聴きにこっそり寄ったのだと思う。

 我らの仲間たちはトランブルを取り囲み

 「××見てこの仕事始めました」
 「○○は目標です」
 「握手してください」
 「写真を一緒に撮らせてくれませんか」
 「サインを・・」などと言っている。

 私も中に入りたかったが十重二十重に取り囲まれていて近づくことも出来ない。そこで気付いて振り返ってみたところ、リチャード・エドランドは壇上で唖然として立っていた。

 まあ、そのようにトランブルは尊敬されているのである。
 続く。 


2007年03月28日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部