* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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「エアキャノン」を作りました、セメントを打つテストします


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なかなか調子よいです




Roll 270 <フィルムとコマの話 その23> 生合成ふたたび

 特撮映画に必須である合成処理は画質の低下を招く行為に他ならないと前回述べた。
 「これはもう仕方ない」とばかり画質の低下にはこだわらない特撮マンもいる。

 しかし特撮の神様ダクラス・トランブルはそうではない。そもそも彼が神様と呼ばれるのは手がけた特撮カットの難易度が高いというだけではなく、その画質が素晴らしく良いという事にもよるのだ。
 では彼はどうやって画質の低下を防いでいるのだろうか。
 彼の特撮カットを見てまず最初に気付くのは多用されている生合成である。

 生合成とは現像していないフィルム上で合成処置を終わらせてしまうことだ、簡単に言えば多重露光である。
 メリエスは背景を黒くしておいてそこに多重露光で別な映像を合成したが、それこそが生合成である、これはフィルムのコピーを伴わないので画質の低下は生じない。

 『ブレードランナー』(1982年/米国)でトランブルが行ったのもそれである。
 詳しくはRoll244の回を参照していただきたい。もっともRoll244の回ではジョルジュ・メリエスの多重露光と同じ技法で撮影された、とのみ述べたが実はトランブルはメリエスから少しだけ進歩している。
 ブレードランナーのファーストカットではカメラがロサンゼルス上空をゆっくりと前進しているのだ。

 メリエスは合成する位置に狂いが生じないようにカメラを同ポジションに保っている必要があったが、トランブルはモーションコントロールという技術でカメラを移動させることが出来たということだ。

 モーションコントロールとはコンピューターによってカメラの動きを制御する仕組みである。
 これを使えば移動撮影したときでも、あるコマが露光したときのカメラの位置を正確に記録しておける。
 ブレードランナーのファーストカットではミニチュア撮影のあと「炎素材」を2重露光するわけだが、この仕組みのおかげで炎と煙突(?)の位置が正確に一致するのである。

 ハイテクを使って、メリエス以来のローテクを拡張する、これがトランブルの真骨頂であると言ってよい。

 とはいえ光学合成を一切行わないで済むわけではない、このカットでも空飛ぶ自動車「スピナー」は合成されている。

 必要やむを得ない光学合成があったとき、なお高画質を保つ方法はあるのだろうか?


2007年05月16日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部