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「ワセリン塗り」
人が(撮影部が)やっているのはよく見るのですが、やったことないのでやってみました、位置合わせがすごく難しいです。


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 287 <フィルムとコマの話 その40> ゴーモーション

 前回人形アニメの翼竜でその羽ばたきがうまくいっている例はほとんど無いと述べた。

 翼竜が現存する生物であり、ムービーカメラで撮影したとするなら(「翼竜は羽ばたいたのか」という古代生物学上の疑問はさておいて)動いている羽はかすんで見えるほどのボケになるだろう。

 しかし人形アニメではそうならず、撮影された羽はボケのないクリアな映像になってしまう。
 仮に羽ばたきが秒2回だとすれば、1往復に12コマ、片道で6コマとなる、これを連続映写すれば6枚の羽がチカチカして見えるだけのきわめて不自然な映像となるだろう(これをストロボ効果という)

 人形アニメの弱点が一番際立つ例として翼竜を挙げたが、ボケの問題はリアルな人形アニメにとって常に障害となる。

 そこでこの問題を解決するためいくつかの技法が開発された、その一つがワセリンである。
 カメラの前にガラスを置き、ぼかしたい部分にワセリンを塗るという技法は人形アニメ用というわけでなくずっと昔から存在するのだが、これはその応用だ。

 つまり人形の動きに激しい部分があった場合、だぶる位置のガラスにワセリンを塗ってボケを作るというわけだ。指でワセリンをこすってボケ足(ボケの向き)を動きの方向に合わせるということもする。

 1コマ撮っては人形を少し動かしまた1コマ撮る、という手間のかかる人形アニメだが、更にワセリンを塗っては奇麗に拭き取りまた塗る(動きに合わせて塗る場所が変わっていくからだ)というのは気の遠くなる作業である。

 私の知るところでは、最初に用いられたのはジム・ダンフォースの「恐竜時代」(1971年/ハマーフィルム)に出てくるプテラノドンだ。有名どころで言えば「ターミネーター」(1984年/ヘムデール)のラスト、骨組みだけになったターミネーターの人形アニメでも使われている。

 またボケを作る別な技法としてゴーモーションというものもあった。


 「ドラゴンスレイヤー」(1981年/パラマウント)で用いられたこの方法は、モーションコントロールされた十数個のモーターを使い、ロッド(棒)を介して外部から人形アニメ用のドラゴンを動かすというものだ。
 人の手によらずモーターでポーズ決めを行うだけで、人形を1コマ動かしては撮り、動かしてはまた1コマ撮るという手法は変わらない。
 しかしこれが画期的であるのは、人形を動かすモーターとカメラのシャッターを連動させ「シャッターが開いている最中に関節を動かす」ということだ。つまり真の動きボケを作り出せるのである。

 この技法によってこの映画におけるドラゴンの動きは驚異的に自然に見える。しかしロッドは後処理で消さねばならず、またカットが変わるたびにモーターとロッドの再セットアップが必要となり、そのたびにプログラミングをし直さねばならないという驚異的な手間を必要とするため、ゴーモーションは事実上この一作で終わった。

 続く。


※<フィルムとコマの話>を最初から読みたい方は →こちら 


2007年09月19日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部