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連続発火装置「シャミセン」から来る電気を火薬に分配するターミナル
通称「ゲタ」(筆者制作)


* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 288 <フィルムとコマの話 その41> プライベート・ライアン

 <その38 シャッター開角度>の回でムービーカメラのシャッタースピードは「機構上いくらでも早くすることが出来る」と述べた、理屈の上ではと。

 しかし前回までの話で理解していただけると思うのだが、映画の場合シャッター速度を上げることは難しい。なぜといえばそれは動きボケをなくしていく行為だからだ。

 例として挙げたシャッター開角度9度、シャッタースピード1/1000秒などで撮影すれば、たいていのものはボケのない映像としてフィルムに定着してしまう。
 これは人形アニメと同じであり、映写すれば人形アニメのような固い動きになる。対象の動きが速ければストロボ効果が発生するし、そもそも動いているようにさえ見えないかもしれない。

 ならばシャッター開角度を変更できることにどんな意味があるのだろうか、と言えば「時に撮影効果として必要とされることがある」ということだ。

 その良い例がスピルバーグの「プライベート・ライアン」(1998年/パラマウント)であろう。オマハビーチ上陸などの戦闘シーンを撮影監督のヤヌス・カミンスキはシャッター開角度45〜90度で撮影したという。
 これは通常1/48秒のシャッター速度を1/96秒、あるいは1/192秒に変更したということだ(撮影コマ数は通常の秒24コマである)。

 通常より2倍から4倍早いシャッタースピードで撮られた映像は、動きが固く硬質で、爆発よって飛んでくる砂や破片一個一個がクリアに見分けられるという奇妙な映像になっていた。
 これは極限状態に置かれた兵士の異常な心理状態(事故ったときあらゆるものがスローモーションで見えたなどと言うが、そんな感覚だろうか)を見事に再現した撮影効果である。
 結果この映画とカミンスキはアカデミー賞の撮影賞を受賞し、その後シャッターを閉めて撮影した映画が大はやりとなって「プライベート・ライアン シンドローム」という言葉まで生まれたのである。

 というわけで、シャッターを45〜90度まで閉めただけで、映像はすでに一種異様な雰囲気を帯びるということがおわかりいただけたと思う。逆に言えばそれは通常の撮影でシャッターをいじるわけにはいかないということなのだ。

 続く。


※<フィルムとコマの話>を最初から読みたい方は →こちら 


2007年09月26日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部