* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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これもまたオモシロイと強引に言えなくはない








Roll 290 <フィルムとコマの話 その43> 動きボケを防げ?

 前回は手ブレの話だった、今回は動きボケである。
 解説する必要もないだろうが、これはシャッターが開いている間に被写体が動いてボケを生じる現象を言う。

 たとえばアサファ・パウエルは100メートルを9.74秒(2007.09.09現在)で走る。これは秒速10メートルと27センチのスピードだ(0からスタートしてこの記録だからトップスピードはもっと早いはず)
 これをシャッター速度1/50秒で撮影すると、露出中にパウエルは20cm以上移動してしまう、体一個分近く動く計算だ。

 出来上がった写真には横幅が倍ほどに引き延ばされたパウエルが半透明の影になって写っている。
 写真としてそれもまたオモシロイ、と強引に言えなくはないが、シャープで発色が良く、ディティールがちゃんと見える、という写真本来の価値観からすればこれは下である。
 それがパウエルかどうかもわからない、というのではスポーツ写真としては使えないだろう。
 この写真からは表情などはもちろん読み取れないし、背景と2重写しになっているので本来の肌の色ややウエアの色もわからない。
 「わからない、読み取れない」というのは言い方を変えれば情報を失っていると言うことだ。


 さて前回のブレボケを含め、スチール写真であればこれを回避するのは簡単だ、シャッター速度を上げればよい。

 ではムービーなら? というのが問題なわけだ。ムービーカメラではシャッター速度を上げることは出来ない(前々回までに述べてきたように、『機構上』上げることは出来ても、『事実上』上げるわけにはいかない)。ムービーは1/48秒で撮るしかないものなのだ。

 だからムービーで撮ったフィルムには上記のような半透明の影が連続して映っているだけだ、ボケは映画をなめらかに見せるために必要なことだと前々回に述べたが、その代償としてムービーは画質を低下させ、情報を失っているのだ。

 とはいえこれは映画の本質的な問題である。こればっかりはしょうがない、と誰もが思っていた。
 しかし諦めない男が居た、それが特撮の神様、画質の求道者、ダグラス・トランブルである。

 続く。


※<フィルムとコマの話>を最初から読みたい方は →こちら 


2007年10月17日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部