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日本エフェクトセンターからいただいたスライドベース(「光学合成の黄昏」の回参照)
ボールねじをステッピングモーターで回し、正確な移動をコントロールします


* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 291 <フィルムとコマの話 その44> ダグラス・トランブルという男

 シャッター速度を上げればブレボケは防止できると前回書いた。

 今やコンパクトデジカメでも1/1000秒くらいのシャッターを切ることが出来る。アサファ・パウエルといえど露光中に動く距離は1センチ少々となり、体が半透明になることはなく表情も充分に捉えられるだろう。
 プロ用カメラになれば1/8000秒というモードもあり、これなら飛び散る汗も写しとれる。
 つまりシャッター速度の向上は画質の向上であり情報量の増加なのだ、と改めて念を押したところでムービーに話を移す。

 ムービーカメラは回転するシャッターが光を通過させたり遮ったりしている、遮っている間にフィルムを送るためだが、その間対象物の動きは記録できない。
 つまり動きを飛び飛びに記録しているわけだ。スタンダードであるシャッター開角度180度では露出する時間とシャッターする時間は半々になる。1/48秒露光、1/48秒シャッターの繰り返しだ。これは動きを半分しか記録していないということになる、残りの半分は見る人が頭の中で補間している。

 これをたとえば、シャッター開角度を9度、シャッター速度1/1000秒にしたとする。フィルムに記録されるのは1秒につき24/1000秒ぶん、つまり実際の動きの2%しか記録されない。

 絵はシャープになるが、それは動きの方向やその量を示すボケという情報が失われているということでもあるわけだ。
 こうなると人は動きを補間できなくなる。<ゴーモーション>の回で述べた「素早く羽ばたいているプテラノドン」が「半透明の羽が6枚あるプテラノドン」に見えてしまうのはまさしくそれが原因だ。

 画質(絵の情報量)と滑らかな動き(動きの情報量)はトレードオフの関係にある。
 これは映画の本質にかかわる問題であり誰にも解決することは出来ない・・・と誰もが考えていた。
 いや解決など「考えもしなかった」と言うべきかもしれない。

 しかし、画質を希求する男ダグラス・トランブルはそうではなかった。
 フィルム側、つまりフィルムサイズや後処理などあらゆる方法での画質向上を突き詰めた男は、ついにカメラ機構に足を踏み入れたのである。

 理屈は簡単である、露出とシャッターの割合を維持したままシャッター速度を上げてブレボケを減少させればよいのだ。

 そんなことは不可能! そう、それはすでに「映画」ではなかった。「ショウスキャン」の誕生である。


※<フィルムとコマの話>を最初から読みたい方は →こちら 


2007年11月07日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部