* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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横浜赤レンガ倉庫ロケ(「フィルムとコマの話 その47」の時に別な写真掲載)
で、モーションコントロールカメラを覗いている筆者。
携帯で友人が撮ってくれていたもの。









Roll 297 <フィルムとコマの話 その50> まずはハイスピード撮影から

 さてコマ数の変更による撮影効果のお話だ。

 前回述べたようにコマ撮りという「動いていないものを動いているように見せかける技術」を特例として除いてしまえば、これは「実際に動いているものの速度を変えて見せる技術」に他ならない。

 まずはハイスピード撮影(スローモーション効果)について語る。

 どんな効果を期待して使用するのかは作品ごとに違うだろうが、おおぐくりに言って動きをスローにすればその映像はなめらかになり、精細さが増し、重量感とスケール感を持つ。
 そしてその変化は時に映像の性質をも変えてしまう。

 たとえば野生動物のドキュメンタリー番組だ。動物の走る姿を捉えた映像はノーマルスピードでは単なる観察記録でしかないが、チーターが全力疾走するハイスピード映像などは躍動する筋肉の動きや、地面を蹴る四つ足の力強さなど思わず見入ってしまう映像美にあふれている。
 あるいは象をハイスピード撮影すると重量感が増し、悠揚迫らぬ雰囲気、いわゆる「象らしさ」が映像にあふれる。

 コマ数を変えるだけで、記録(データー)が作品(見るだけでも価値がある)に変貌する場合もあるのだ。

 また、この「映像の性質を変える」という言葉にはフィルムの雰囲気を変えるということだけでなく検証可能な効果をもたらすことも含まれる。

 それがスケール感だ。簡単に言えばハイスピード撮影されたものは「大きく見える」のである。

 その理由としてまず重力加速度というものがある。
 簡単に言えば物が落ちるスピードだが、この世の物体にはすべて地球の引力による 1G=9.8m/sec² という加速度がかかっている。
 これは物を落とせば2秒後には秒速40mに達するということであり、30mのビルの上から物を落とせば地上に激突するまで2.5秒かかるということでもある。

 さて特撮映画で標準的なミニチュアの縮尺は1/24だ、この縮尺で30mのビルを造ると高さ1.25mになる。
 1Gのもとでは物が1.25m落下するのに0.5秒しかからない。したがって着ぐるみの怪獣がこれを破壊すると破片は一瞬で床に落ちる。ハタで見ているとまるで子供の積み木遊びのようにしか見えない。

 たとえこのビルが本物と見間違えるほどに精巧に作られていようと、どこか実際にあるビルを寸分たがわず・・・ ではなく、寸分だけ変えてあとは正確に・・・ 作ったものであろうと高さ30mには絶対見えない。

 これを解決するのがハイスピード撮影であるのはいうまでもない。

 続く。


※<フィルムとコマの話>を最初から読みたい方は →こちら 


2008年02月06日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部