* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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「破壊された建物」に合成される煙素材を黒バックで撮影中

燃やしているのは私、燃やされているのはスモークチップ、これも要ハイスピード撮影









Roll 298 <フィルムとコマの話 その51> ミニチュアと重力加速度

 前回、ミニチュアビルを破壊しても破片が早く落ちすぎて本物には見えないと述べた。
 高さ30mから物を落としたら下まで2.5秒かかるのに対し、1.25m(1/24のミニチュア)だと0.5秒しかかからないからだ。

 この0.5秒という数字は「落下距離=重力加速度×時間×時間÷2」という公式から

  1.25 ≒ 9.8×0.5×0.5÷2

 と導き出されるわけだが、落下時間を計測したり、重力加速度の公式を引っ張りだしてきたりせずとも見た人はそれを「あ、1mくらいのミニチュア」と即座に看破するだろう。
 我々は日常生活の中で1mの高さから物が落ちればそれがどんな風に見えるか充分に承知しているからだ。もちろんいかにミニチュアビルが精巧に出来ていようと意味はない。そこでハイスピード撮影の出番である。

 方法は簡単、1/24ミニチュアビルの破壊であるならば5倍のハイスピード撮影をおこなえばよいのだ。
 0.5秒で地面に到達していたビルの破片は地上まで2.5秒かかるようになり、所要時間は本物同様になる。

 落下する物体の速度に注目してみよう、30m落下した物体は

 速度 = 加速度 × 時間 (24.5 = 9.8 × 2.5)

 となり秒速24.5mに達している。*注1

 これは1/24のミニチュアセット内では秒速約1mで落下していれば本物に見えるということだ。*注2

 では、ミニチュアの破片は実際にはどれほどの速さになっているのだろうか?
 1.2mの高さから落ちたものは0.5秒で地上に達するので

 4.9 = 9.8 × 0.5  で秒速4.9mである。

 最適な速度は秒速1mなのだからこれは5倍ほど速すぎる、つまり5倍のハイスピード撮影をおこなってスピードを1/5に見せかければよいわけだ。

 結論として、1/24のミニチュア破壊は5倍のハイスピードで撮影すれば、破片が地面に落ちるまでの時間も、落下速度もリアルに見えるということになる。

 これが前回述べた「検証可能な効果」である。
 この話更に続く。


*注1:
実際には空気抵抗があるので公式通りには加速せず、いずれ空気抵抗と重力加速度が釣り合った速度で安定する。これを終端速度(Terminal Velocity)という。
スカイダイビングは10秒ほどで終端速度に達し、秒速50mくらいで安定すると聞くから、意外と早く加速が止まるということだ、空気抵抗恐るべし。

*注2:
縮尺されたサイズの中での正しい速度をスケールスピードという。ラジコンカーは1/10くらいのサイズなのに実車並の速度が出る。だから見た目通常の10倍の速度(スケールスピード時速数百キロ)で走っているように見える。これではいかに精巧なモデルでもリアリティがない。



※<フィルムとコマの話>を最初から読みたい方は →こちら 


2008年02月20日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部