* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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このような注意書きがスタジオのくぐり戸にはよく書いてあります。特撮ステージにはめったにありません
これは出入りが同録(同時録音、シンクロとも言う)の妨げになるせいであり、特撮は同録ではないからです。









Roll 299 <フィルムとコマの話 その52> 感覚的スケール感

 前回は怪獣映画におけるハイスピード撮影の効用について述べた。

 「ハイスピード撮影の検証可能な効果」という事で、破壊されたミニチュアビルの破片の速度についてのみ話をしたのだが実際にはハイスピード撮影の効果はそれだけではない。
 実のところ特撮映画は破壊シーンに限らず常時ハイスピード撮影であると言ってよいのだ。
 前回の話の続きで言えばたとえば怪獣、ビルを破壊のシーンでなくとも着ぐるみ怪獣を撮る際にカメラがノーマルスピードで回っているということはない。

 ビル壊しではないので5倍ということはないが、ただノソノソ歩いているだけでも2倍速程度でカメラが回っていることは多い、それは感覚的なスケール感の問題である。

 どういうことかというと、我々の内には大きいものは重く、重いものは急に動かず、動きだしたら止まらないという常識が存在する。
 したがってギクシャク動く物(急激に動きの速度が変化するもの)は軽く見え、結果それが小さく見える。

 だからミニチュア撮影が多く、対象物を大きく重く見せかける必要のある特撮映画ではハイスピードが欠かせない。
 ハイスピード撮影によって(速度もさることながら)速度の「変化」が滑らかになるからだ。
 つまりハイスピード撮影をおこなえば変化に要する時間が引き延ばされ、動きの中に急激な変化をした部分があっても緩和されるということだ。

 怪獣に話を戻すと、「秒速1mで歩く怪獣の映像」と「秒速2mで歩く怪獣を2倍速で撮った映像」は同じに見える筈だ。どちらもスクリーンの中では1mを1秒で歩く。
 しかし実際には2倍の速度で歩かせた上で1/2のスローモーションにした映像のほうが怪獣は格段に大きく見える。それは速度変化に急な部分がなく「動きの角が取れている」せいだ。
 スーツアクターがいくらゆったりとした動きをこころがけたとしてもコントロールできないこまかな動きや微振動をハイスピード撮影が滑らかにしてしまうのだ。

 これは数字化できるものではなく、先に言った「検証可能な効果」ではない(数字で言うなら1倍速と2倍×1/2倍速は同じだ)。しかしハイスピード撮影の重要な効果である。これが感覚的なスケール感である。

続く。


※<フィルムとコマの話>を最初から読みたい方は →こちら 


2008年03月05日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部