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グリーンバックの前で合成素材撮り
この爆発は直径2〜3メートル、はっきり言って限界に近い小ささです


* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 301 <フィルムとコマの話 その54> ミニチュアを爆破する

 ミニチュア撮影におけるハイスピード撮影の効果について続ける。

 これから述べるのは爆発カットにおけるハイスピード撮影だ。

 爆発カットで問題になるのは爆煙−火薬の急速な燃焼で発生する煙−である。
 これが空気抵抗によって減速されひとかたまりの煙になるわけだ。

 ここでリアルスケールでのビル爆発を考えてみる。
 ビルにガソリンやらセメントやらの「映画的にハデな」火薬を詰めこんで爆発させるとその煙(や炎)は壁面から10mばかりも吹き出すだろう。

 しかしこれと同じ絵を1/24のミニチュアで撮ろうとしても、その爆煙は周囲4センチではおさまらない。
 火薬の燃焼によるガスの膨張は急激であり、どう仕込んでもある程度以上には広がってしまうのだ。

(逆にいくら火薬の威力を増したところで煙が再現なく広がっていくこともない。質量のないものは空気抵抗がその振る舞いをほとんど決定してしまうのだ。
 たとえば綿の固まりをつかんで投げたとしよう、プロ野球の投手が投げようと私が投げようとその飛ぶ距離はたいして変わらない筈である)


 簡単に言えば、爆発の煙はどうしてもある程度以上の大きさになり、それはミニチュアにとって大きすぎるということだ。

 すると問題になるのがカメラアングルだ。

 リアルスケールの場合、その爆煙が建物に対して格段に大きくなることはない。したがって特に配慮をせずとも爆発は画面に納まる。
 しかしミニチュアで同じフレーミングをすれば爆煙が画面からフレームアウトしてしまうだろう。

 このため特撮では「爆発合わせのフレーミング」をすることがある。画面に対して建物が妙に小さかったり、建物の前に不自然な空間が広がっている事があるのはそれだ。

 しかしそれは誉められた話ではない。

 映画用語に「待ちポジ」という言葉がある。フレームインしてくる人物をカメラが待っているというほどの意味だが、これは肯定的に使われる言葉ではない。
 より正確に言うなら「画面に不自然な空間があり、そこに人物がフレームインしてくるのが容易に予測できるカメラポジション」ということになる。

 演出的に後から人を登場させているのにそれを予測させてどうする、ということであり、人物が入ってはじめて画面構成が安定するような絵を、人物抜きの状態で観客に見せちゃダメだろ、ということでもある。
 つまりこれはまずいフレーミングを指す言葉なのだ。

 先に述べたのは「爆発の待ちポジ」と言うことになる。


 続く。


2008年04月02日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部